「重要なのはアジリティ」パートナーと共にユーザー価値を追求する #10Xtopicレポート

2020/10/9

10Xではオンラインイベント「10X Topic #1 パートナーと共にユーザー価値を追求するProduct&Growth」を2020年9月8日に開催しました。

「10X Topic」は、10Xが日々取り組むプロダクトづくり、色々なメンバーの仕事の内容、10Xならではの面白さなどをカジュアルにお話しするオンラインイベント。今回は、開発不要でネットスーパーを立ち上げることが可能なサービス「Stailer」のプロダクト開発とリリース以降の成長を担うグロースについて、10X CEOの矢本真丈、グロースの飯山秀人、カスタマーサクセスの濱坂愛音がお話ししました。



PMで未来を定義し、グロースで事業を成立させる。10Xの事業成長の裏側

-まずは、CEOである矢本より、10Xの特徴的な開発フロー紹介からスタート。10Xでは、2017年6月から3年間、「Weeklyリリース」を崩していません。毎週水曜日にリリースをし続けてきました。

矢本「リリースが早くて回数が多いんです。でも、早いのは当たり前。特に大きなリリースは、パートナーを動かして起きるものが多いです。パートナーのシステム構造を一緒に変化させ、バッチ処理をAPI化するとか、そもそも存在しないデータベースを作るとか。そういった大きい案件を通じてユーザーの体験が“10xする”ことがありますね。」

-スピード感を持って動く少数精鋭の組織は、経営3名、メンバー14名で構成されており、グロースのメンバーはわずか2名。

矢本「グロースの価値は大きいと思っています。データを使って問題はどこにあるのかを分析し、課題(Why)を見極めるために積極的にインタビューをしインサイトを捉え、プロダクトの開発を加速させたり、パートナーにフィードバックして動きを変えるのがグロースそれを担っているのが、飯山と濱坂なんですよね。」

重要なのはアジリティを損なわないこと。10X流・パートナー企業との向き合い方

-「Stailer」の前身となる「タベリー」を提供しているころから副業として関わり、現在は事業のグロースにおける重要なポジションを担っている飯山。10Xでこなしているグロースの仕事は、コンサルティング、アプリの仕様やログ設計、データ分析、改善提案、戦略立案、広告運用など、多岐にわたります。

飯山「直近では、コンサルもやっているのですが、通知系やクーポン系のCRMだったり、全体のROIをもとに全体の予算配分をどのようにするべきかなどをパートナーの方々と一緒に考えています。また、『イトーヨーカドーネットスーパー』の改善について、どこにフォーカスして行えば良いのかをデータをもとに分析したり。予算をまるっといただいて、どうやったら新規獲得や認知獲得の効果を最大化できるのか、というのもやっていますし、状況に応じて動き方を変えていますね。」

-パートナーとの関係で最重要となることは「アジリティ」(環境変化に即応するために欠かせない、経営・組織運営のあり方における機敏性)だと言います。

飯山「サービスを伸ばす体制はすでに揃っているので、パートナーとのやり取りの中でボトルネックにならないよう、アジリティを損なわないような工夫が必要だなと思っています。」

-小売のパートナー企業ともSlackでコミュニケーションをし、Redashでアプリや広告運用のパフォーマンスをレポート、Trelloで開発タスクを見える化・共有し、レポーティングもNotionで行うなど、さまざまなツールを導入し、業務効率化をはかっているそう。

飯山「適切なツールを導入し、こちら主導で運用してパートナーを巻き込むことで、スピードが上がる環境づくりをしていますね。」

-最後に、一緒に働いているメンバーについて。

飯山「能力の高さをすごく感じています。一人三役くらいやっているんじゃないかと思うくらい。開発のメンバーも実装するだけじゃなく、自らイシューを切って改善したりしていて。すごいですね。役割はあれど、業務分担は柔軟にやっていて、それぞれが自立して動いています。周りのレベルが高くて、緊張感があって、いい意味でプレッシャーをもって働けています。」

99人にN1インタビューを実施!顧客も気づいていないイシューの掘り起こし方

-カスタマーサクセスとN1インタビューを兼務しており、10Xでは99人にN1インタビューをした濱坂は、N1インタビューは「具体的な1ユーザーのペインや、特定のサービスのユースケースを明らかにすることが得意なリサーチ方法」だと語ります。

濱坂「たとえば、自分以外の人がなぜ買い物するときに『ドン・キホーテ』を選ぶのか、詳しい理由はわかりますか?行動ログがあったとしても、なぜその棚の前で立ち止まったのか、なぜその商品を手にとったのかまでは実際に聞いてみないと、わからないんです。そんな因果関係を明らかにするのがN1インタビューだと思います。」

-N1インタビュー実施のコツは以下3点。

濱坂「なぜドンキに行くのかを聞き、『品ぞろえが多くて便利だから』と答えたとします。大事なのは、ここで終わってはいけないということ。『品ぞろえが多いと、なぜ嬉しいんですか?』と、一歩踏み込みます。すると、少し考えたあとに『小さい子がいるので、複数店舗まわるのが大変なんです』と、一段具体的な回答が返ってきます。冒頭の『品ぞろえが多くて便利だから』だけだとわからないユーザーのペインにつながったりするので、掘り下げるのは非常に大事だと思います。」

-また、インタビューを社内用にまとめる際は、文字以外の情報を入れることもコツの一つだそう。

濱坂「レシートは、ユーザーさんが語ることよりファクトだったりするので、写真をもらってレポートに貼り付けたりします。N1インタビューを実施した当事者は深い気づきを得ることができるのですが、横展開しにくい特性があると思っていて。ドキュメントを読んだ人もなるべく臨場感を持ってインサイトが感じられるよう、視覚的にも工夫しています。」

-10Xでは、N1インタビューの重要性が職種を超えて共有され、改善に活かすスピードも早いと話します。

濱坂「N1インタビューを終えて、オフィスに戻るまでに直っていたケースがありまして(笑)。さすがに早すぎる!と驚きました。」

トークセッション

本イベントのメインとなるトークセッションでは、事前にいただいた質問のほか、当日質問も募集。多数の質問が集まり、トークセッションだけで約1時間という大ボリュームに。LTのテーマである「プロダクト開発について」「N1インタビューについて」「グロースについて」のほか、10Xのカルチャーや働き方についてなど、包み隠さず回答しました。

プロダクト開発について

-パートナーごとにフェーズや要件が異なるなか、プロダクトの開発優先順位はどのように決めていますか?

矢本「大きいボールが並列で4~5個走っているような状態で、それぞれのボールをエンジニア2人で進めています。エンジニアは10名ほど。うちの特徴なのですが、1個の大きなプロジェクトを5人10人で開発するのではなく、1人2人の小さなエンジニアチームで走らせ、チームとしては並列でタスクが進められる状態になっています。なので、開発の優先順位も各プロジェクトチームに預けており、トップダウンでシビアに決めていなくて。並列で動いたものが最後はStailerというプロダクトに合流し、すべてのユーザーに波及する価値になることが重要。プロジェクトは既存のユーザーやパートナーにとって価値のある機能開発はもちろん、、新しいパートナーに必要な新機能を開発することや、一年後に必要になる機能を先回りしてR&D的に開発していることもあります。N1インタビューで出てきた、すぐ実装できるような案件なんかはイシューになる前にエンジニアが実装していたりするので、大きいボールにならないことが多いですね。」

-小さい改善はエンジニアが見つけて勝手に改善、という流れですか?

矢本「そうですね。解決する方向性だけ確認できたら、そのまま背中を預けてしまうことが多く、細かく管理はしていないです。エンジニアもPMもグロースも、ユーザーやパートナーの一番大きなイシューから解決できているかだけ、眼光を光らせてチェックしています。」

-イトーヨーカドーなどの大きいパートナーさんからの要望は、どのように折り合いをつけているのでしょうか?

矢本「本当に重要なイシューと合致しているかを、こちらから確認することが多いですね。たとえば以前、『恵方巻の予約システムを開発してほしい』という話があったのですが、多く見積もっても1%のユーザーしか使わないものでした。これと比較して100%のユーザーに影響がある機能と、どちらに投資すべきですか?と話したことがありますです。一番重要なものにフォーカスできるよう、こちらがリードしてプロダクトマネジメントをしていますね。」

N1インタビューについて

-N1インタビューを、どのようにプロダクト開発に活かしていますか?

濱坂「インタビューをした本人はどうしてもバイアスかかったりしているので、まず社内にレポートを出して、コミュニケーションをしながらイシューを決めていますね。」

矢本「イシューをもらって仕様を預かることは多いです。例えば、濱坂さんから『高単価な人は水をよく買っています』とレポートが上がってきたときに、『水を早い段階で(目につく)場に出すのはどうですか?』という意見があって。でも、並び順を変えることは、普段利用しているユーザーに混乱を招きやすい。売り場を変えるべきか、ついで買いができるようにするのかどっちがいいんだっけ、と。それを言語化して、仕様に落とし込みますね。」

-N1インタビューのアウトプットで気をつけていることはありますか?

濱坂「小さいことの積み重ねなのですが、視覚情報をいれたり、サマりすぎないようにしたり。サマリすぎるとN1インタビューの意味がなくなってしまうので、話し言葉のまま伝えたり、臨場感を意識しています。」

-N1インタビューを軸にプロダクト改善を進める場合、ターゲットやインタビュー対象の設定が難しいと感じています。特にプロダクト開発の初期段階では、どのように設定していましたか?

矢本「0から1のスタート時に知らない人にインタビューしてインサイトを得てプロダクトを作るのは、僕は難しいと思っています。共感できなかったり、理解できなかったり。なので、自分や妻や友人など、一番近い人の問題を解くところからスタートすることが多いです。」

矢本「『Stailer』では、C向けの問題は理解できている状態からのスタートでしたが、B向けの問題、たとえばイトーヨーカドーやスーパー業界や小売業界が持っている問題の解像度はゼロからスタートしているんですよね。ただ、我々のプロダクトに魅力を感じてくれていたので、彼らのペインを根掘り葉掘り聞けたり、現場に案内してもらえたりすることができました。」

-パートナーに信頼されていたのですね。

矢本「10Xは、ユーザーの問題を解決することにものすごくフォーカスをしていて。この点は誰にも負けないし、パートナーもその点を信頼してくれているので、相談してくれる関係が生まれているんだと思います。」

-N1インタビューのターゲットは、どのようにピックアップしていますか?

濱坂「明らかにしたいことによってセグメントをわけてアプローチしていますね。分析するテーマはパートナー企業、いまですとイトーヨーカドー側とのコミュニケーションの中から生まれることが多いです。今までは10Xから提案する事が多かったのですが、最近は先方から『こういうテーマで分析してほしい』とご依頼いただくことが多くなりました。N1インタビューの大事さが浸透してきたのかなと思います(笑)。」

-飯山さんや濱坂さんがパートナー企業と数字や分析結果をみながら改善ポイントをディスカッションし、深堀りしましょうとなったら濱坂さんがN1インタビューする、という流れなのでしょうか。

矢本「そうです。組織図を公開しているのですが、カスタマーサクセス、パートナーサクセスはグロースのチームの中にいるんですよ。プロダクトを成長させるためのHowやWhyだったりするので。」

グロースについて

-直近では、どんなグロース課題に取り組んでいますか?

飯山「3つあって、限りある予算をどう配分したらスケールできるのかというROI検証と、プロダクトではオンボーディングと検索の改善ですね。」

-「10X社のグロースは器用貧乏の方が向いているかも」とお話されていましたが、ご自身も器用貧乏と思われていますか? そうであれば、専門性を持つ人材との市場価値の差別化はどのように考えていますか?

飯山「会社や事業のフェーズによって異なると思うのですが、アーリーステージの場合は器用貧乏にいろいろできるというよりは、なんとかする力を発揮できることが強みになるかなと思っています。規模が大きくなってくると専門性の方が重要になってきたりするんですよね。市場価値としてはどちらも重要ですし、どちらも身についていたほうが良いと思います。」

-イシューの解決に必要な手段を身につけていない場合、新たに取得していくケースが多くあると思いますが、その取得スピードを上げるために意識していることはありますか?

飯山「イシューを解決する方法を考えると、アイデアはでてくるので、その後Howとしてどう形にするかですよね。詳しい人に聞くとか、とりあえずその分野の本を5冊読むとか、とりあえず情報収集をして実践してみたりしています。」

パートナーについて

-パートナーとの折衝では、どのような点に気をつけていますか?

飯山「アジリティをいかに上げられるかかなと思っています。いわゆる古い体質の会社や業界の中でも、新しいことが得意な人は必ず社内の中にいるので、そういった人たちや、経営層など偉い人を巻き込んでいくのが大事だと思います。あとは慣れですかね。SlackやTrelloを導入しているのですが、意外とすぐに慣れていただけました。あとは、なんだかんだで電話のコミュニケーションは大事です(笑)。」

矢本「大事なのは、彼らも大きなイシューに向かっているということ。だから我々のようなパートナーを必要としてくれていると思いますし、それを裏切らないことが大事。彼らに見えて課題を可視化するとか、コミュニケーションが噛み合っていないときは噛み合っていない理由を言語化して解決したり。プロダクトを作ったり、組織を作ったりするのと同じように、パートナーとの関係も作っています。」

事業について

-いまネットスーパー事業を行うなかで、1番の課題はなんですか? 

飯山「ネットスーパー市場自体をどう大きくしていくか、ですかね。今ある市場のシェアを取っていくかではなく。リアルな店舗や宅配の市場規模って凄まじいんですよね。それをいかにネット化できるか。そのためには、ネットスーパーの認知度を上げること、配送手段のフレキシブルさ、品揃えや欠品を無くすなどのオペレーション、この3つを改善しなくてはいけないかな、と思っています。アプリの使い勝手を上げるのはもちろんですが。」

矢本「ネットスーパーってローカルなサービスなんですよね。日本のほとんどのエリアではやっていなんです。97%のまだネットスーパーをやっていない店舗さんにデジタル商売をやってもらう働きかけをしないと、体験が世の中に実装されない。まずネットスーパーという体験が実装されたうえで大事になるのが、いい商品があるとか、受け取り方の柔軟さや、ライフスタイルに合っているかで。その二段階になるかと思います。」

採用・カルチャーについて

-10XのProduct&Growthにおける「10Xを体現する方」は、体現できていない方と比べて、どのような点が異なると思いますか? 視点、行動、思考特性など。

濱坂「飯山さんがまさに、だと思います。今何を明らかにするべきか、明らかにするための要件定義などがパンパンパン! と出てきたりして。“10Xだな”と、ハッとします。」

飯山「褒めていただいてありがとうございます(笑)。会社の規模が“10xした”ときに人数が150人、パートナーが10社20社の規模感になっていると思うんですけど、その体制を見据えたときにこの3か月間は何をするべきなんだっけ、ということを考えながら動いています。」

-これまでの業務に活かせた書籍はありますか? 

矢本「『ジョブ理論』じゃない?」

飯山「『ジョブ理論』と『顧客起点マーケティング』ですかね。他にもいろいろ読みましたがHowが強いなと思って。この2冊がおすすめです。」

-「Weeklyリリース」をはじめ、かなりのスピード感に驚きました。個々人の能力の高さもあるかと思いますが、生産性を担保するための具体的な工夫があれば教えてください。

矢本「ドキュメントシステムですね。必要な情報はドキュメントに残し、入社して1日目の人でもNotionを見れば、自律的に自分のやるべきことを見つけて仕事していける状態にするために、すごく気を配っています。今意思決定していることを、数カ月後に入社した人でも意思決定の背景がわかるように、Whyをしっかり書くようにしています」

以上、オンラインイベント「10X Topic #1 パートナーと共にユーザー価値を追求するProduct&Growth」の模様をお届けしました。

全編動画も公開しています

本イベントの内容は下記のYouTube動画でもアーカイブを公開しています。

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