「現場は“オペレーションがわかるデモ”が見たいんだ」10XエンジニアとBizDevメンバーによる連携の裏側

2020/12/8

Business Development(BizDev)とエンジニア。10Xでは、この2つの役割が密に連携することで、Stailerのような小売事業者向けのサービスを10xへ押し上げようとしています。

BizDevの役割は、小売事業者とプロダクト開発の間に立ち、サービスの全体像や戦略を練ること。一方で、エンジニアはBizDevメンバーと小売事業者が話し合った内容をサービスに落とし込むわけですが…?10XのBizDevを担当する山田聡とエンジニアの石田光一に話を聞くと、10Xの場合はプロジェクトの“かなり初期段階”からエンジニアが参加しています。

そこで今回は、新しくStailerを導入予定の、とある地方スーパーマーケット事業者のプロジェクトを例に、BizDevとエンジニアがどのような働き方をしているのかを聞きました。


※撮影時のみ、マスクを外しています。
プロフィール

山田 聡 | @syamada0(写真左)
取締役CFO兼BizDev
三菱商事株式会社でロシア・カザフスタン向けの自動車販売事業・現地販売会社のM&A及びPMIを経験。その後、米系PEファンドであるCarlyle Groupに参画し、おやつカンパニーやオリオンビールの投資・PMIを実行。Wharton MBA(2017年)。10X以外にもVoreas北海道を始めとするスポーツチームの経営支援に関わる。

石田 光一 | @wapa5pow(写真右)
Software Engineer
1児の父。グリー「探検ドリランド」、gumi「海外版ブレイブフロンティア」などのソーシャルゲームのエンジニアとして活躍。企画・分析・開発とすべてに携わる。その後LITALICOでは全社基礎構築の技術支援を行う。フリーランスとしてスタートアップの技術支援も。

地方スーパーの強いニーズから誕生した「クリック&コレクト」という仕組み

ーまず、お2人が進めている新規事業の概要を教えてください。

山田:僕らが今進めているのは、ある地方でその地域では圧倒的にNo.1と言われるスーパー事業者との取り組みです。来年リリース予定でまだ名前はお出しできないため、仮にA社と呼ばせてもらいますね。A社は現在ネットスーパー事業を運営していないため、新たに立ち上げようとしています。そこを、僕らがStailerを使って全面的に支援しているんです。

Stailerのターゲットは、「すでにネットスーパーを持っている小売事業者」「まだネットスーパーを持っていない小売事業者」の両方。前者については、イトーヨーカドーさんに導入いただいていますが、後者への提供、つまりゼロからのネットスーパー立ち上げは、今回のA社が初めてです。更に、この取り組みではそのエリアのエンドユーザーのニーズを勘案して、通常の配送型のネットスーパーとは違い、10Xとしても新しいサービス形態で事業体を立ち上げることになりました。それが「クリック&コレクト(Click&Collect)」です。

クリック&コレクトは、お客さまがスマホもしくはWebサイトから注文した商品をスーパー側で袋に詰めて用意。その後、お客さまご自身に店舗まで取りに来ていただき、店舗で準備済みの商品を受け渡しするというものです。いわゆるドライブスルー型ネットスーパーです。

※「オンラインで商品を注文した後、店舗で受取る」方式については他にも「ドライブスルー受け取り」「カーブサイドピックアップ」「BOPIS=Buy Online Pickup In Store」など色々な呼び方があります。


山田聡(取締役CFO兼BizDev)

ーこのサービス形態は、どこから着想したんですか?

山田:ネットスーパーは、地方都市では2つの強いニーズがあります。

1つ目は、地方には共働きのご家庭が多いこと。子どもがいるご家庭の場合、仕事が終わってからお迎えへ行き、夕飯を作って寝かしつけて…と一息つく暇もない。そんな環境下だからこそ、忙しい平日の買い物の時間を少しでも減らすこと自体とてもニーズが高かったんです。

もう1つは、地方のご家庭は車の保有率が高いこと。一家に一台どころか、一人一台くらいの割合で車を持っています。スーパー側が自宅へお届けするよりも、お客さまご自身で取りに来てもらったほうがお客様自身は時間がコントロールしやすい。この2つの要素から、クリック&コレクトのスタイルにしました。

ー今回は「まだネットスーパーを持っていない小売事業者向け」の事業ということになりますが、そもそもどういったきっかけで始めることになったのでしょうか?

山田:10Xが「今後はネットスーパーを支援するStailerに注力する」と情報発信していたところ、A社からコンタクトしてもらったことがきっかけでした。更に、欧米におけるネットスーパーやクリック&コレクトの事例も調査をして、WhitePaperを公開したりもしていたので、そちらが先方の目に留まり、信頼を勝ち取ることに繋がりました。ただ、10X自身はネットスーパー立ち上げの実績も当時はなかったため、ちょうど「イトーヨーカドー ネットスーパー」のローンチ時期とも重なり、そのプロダクトも見せて「こんなUXをつくれます」と示しながら話を進めました。

「何も決まっていない」状態だからこそ、先回りした連携プレー

ー 一番聞きたいと思っていたのは、BizDevとエンジニアがどうやって一緒に動いていたかです。流れとしては、まずBizDevが案件をとってくる感じになるんですか?

山田:そうですね。ありがたいことに、さまざまな企業さまからご連絡をいただきます。しかし、企業によって興味の種類は違います。とりあえず話を聞いてみたい人もいれば、「すぐにネットスーパーを立ち上げたい」と本気度の高い人もいる。貴重な(特に開発)リソースを最大限レバレッジしていくために、どの企業と、どんな形でプロジェクトを推進するか、という見極めを、BizDevがやっています。

10Xの事業は、パートナーの協力がないと何もできません。そのため、本気でネットスーパーをやりたいと思っているパートナーや、大きく成功するポテンシャルのある相手を見極めないといけないんですよね。その後、小売事業者側の経営企画担当者や役員と、事業立ち上げに必要な絵面や戦略を固めていきます。更に、フィーなどの条件交渉もします。

A社とは、弊社にとって1件目だったイトーヨーカドーのリリースの前からディスカッションし始めていました。その後、大枠で「こんな感じのクリック&コレクトにしましょう」「目指す事業規模や経済条件はこうしましょう」となり、具体的にネットスーパーのオペレーションをどうするかを話し合う段階で石田さんたちエンジニアに入ってもらった形です。

ー 一方、エンジニアは?

石田:エンジニア側では、お客さまがアプリから商品を買えるよう、スーパー事業者側でマスターデータと言われる在庫データを整えられるようにしています。また、お客さまが使うネットスーパーアプリとは別に、注文が入った商品をお店のスタッフさんがピックし、袋に入れてお客さまに渡すバックヤードのプロセスを管理するためのスタッフ向けアプリも開発しました。

A社の場合、最初は10XのCTOである石川さんがマスターデータやオペレーションを確認し、画面に起こしてくれました。それを、マスターデータと商品管理データの整備、スーパーのスタッフが使うアプリの二手に分かれて開発していったんです。後半は、僕ともう一人のエンジニアで、スタッフ向けアプリをイテレーションしながら改善。かなり初期から参加していたこともあり、「何も決まっていない」状態だからこそ、情報が出てくるタイミングに合わせて、何が必要なのかを先回りして考えながら動いていた感じです。


石田 光一(Software Engineer)

現地訪問のたびに見せたデモが、話を推し進めた

ー作るものが決まっていないと、作って・壊してをくり返すことになると思うのですが…。スーパー事業者との期待値調整などはどうやっていたんですか?

山田:オンライン会議や現地訪問のたびに、石田さんたちがつくったデモアプリを見せていました。スーパー事業者が確認したがっていたのは、注文が入ったあと、店頭でお客さまに商品を渡す店舗スタッフによるオペレーションが上手く回るかどうか。小売の経営陣の方はその生業上、店舗のオペレーションの精度や効率性に対する感度が非常に高いんです。なので、これを確認できないと、彼らとしても社内での最終稟議をとれず、プロジェクトのGoを出せない状況でもありました。僕らとしては、サービスの内容はもちろん、それによってオペレーションがしっかり回るかどうかを現地で見せる必要があったんです。

ーデモアプリだけではなく、オペレーションの予行練習的なところも含めて事前に用意していた?

石田:そうです。現地では、デモアプリを確認してもらいながら、僕らもスタッフの方々にヒアリング。習熟度はもちろん、商品の並べ方をどうやっているのかがわかり、お互いの理解は深まっていきました。今回の事業では、まず何かを見せないと話が進まない。その点、デモを見せられたのは良かったと思っています。



ー何回くらい現地を訪問したんですか?

山田:今のところ合計3回ですね。更に現地訪問する前段階から、オンラインベースでサービスに軽く触れてもらうために、スクリーンショットやTestFlightを通じてデモアプリを実際に触ってもらったりもしていました。ただ、やはり目の前でアプリを使ってもらったほうが圧倒的に便利さや使い勝手を実感してもらえますね。先方のIT担当の方が初めて触っていただいた時に「こんなプロダクトが欲しかったんです」と感動してくれることもありました。

ー現地へ行ったことで、新しい気付きはありましたか?

石田:めちゃくちゃありました!当初は、スタッフが使うアプリを「ピッキング(商品を集める)」「パッキング(商品を袋詰・梱包する)」「お客さまに渡す」の3つのプロセスでまとめようとしていたんです。でも、実際に現地へ行ってみたら、「パッキング」のプロセスはほぼ不要で、「ピッキング」「お客さまに渡す」が大事ということがわかりました。実際に現地へ行ってみてバックヤードがどうなっているのかを知った上でプロセスを整理できたのは、とてもよかったです。

ーすばらしい!とは言え、やはり気になるのが新型コロナウイルスによる影響です。それほど頻繁に現地へ行けなかったのではないでしょうか?

石田:そうですね。そこで今は10Xのオフィス内に、店舗やバックヤードの疑似体験ができる「ピッキングラボ」をつくっています。もともと、前のオフィスでも社内デモはやっていて、商品棚に模した棚を置いて、バーコードの付いた箱を商品に見立てて並べたり、ピッキングしたりできるようにしていたのを、拡充したものです。今後は、配送をいれたり、バーコードを印刷して貼る仕組みをつくるなど、色々なデモができるように、進化させていく予定です。


10Xオフィス内の「ピッキングラボ」。日々商品やデバイスが増えています。

エンジニアとの密な連携が、10Xの武器になる

ー山田さんは、今回のようにエンジニアとがっつり一緒に働いたことは?

山田:ないですね。前職は商社やPEファンドだったのですが、人生で初めてこんなにエンジニアの皆さんと一緒に仕事をしたくらい!

ーなるほど(笑)。

山田:A社の案件は、すべてにおいて新鮮でした。技術やプロダクトに関する知識があったわけじゃないので、専門用語もわからず、先方からどんなデータをどういった形式で送付してもらい、そこからこちらがどんなアウトプットを出すのかと聞かれ、面食らっていたところもあったんです。ですが、石田さんを初めとして10Xの開発メンバーは非エンジニアに対してもわかりやすく説明してくれるので、スムーズにキャッチアップできました。
おかげで、最近は小売事業者から何かリクエストを言われたときも「これはもう少し抽象度を上げれば、より汎用性のある良い仕組みをつくれるはず」と自分自身でもプロダクト設計面を意識しながら議論できるようになりました。

ー石田さんは?

石田:この案件は途中から参加しているので「誰が何を担当しているんだ?」を把握するのは少し苦労しましたね。あと、強いて言うならば、もう少しエンジニアに一括して任せてもらう場面もあっていい気がしました。BizDevメンバーはあらゆることを中継ぎしてくれて感謝していますが、先方のシステム担当とやりとりする場合など、エンジニアが全部やったほうがいいパターンもけっこうあると思うので。

山田:たしかに、そうですね!実際、A社や他社の案件でも最近は直接10Xのエンジニアが先方のシステム部隊などと直接やり取りするケースも増えてきており、効率が上がってきていると感じています。


コーヒーとお菓子を片手に対談しました!

山田:総括すると、10Xが挑む「ネットスーパー」自体はもう20年くらい前からあるものです。しかし、僕らが小売事業者に提案するものは、「誰にでも使いやすい」「欠品がない」「柔軟に受け取れる」など、ネットスーパーの質を今までにないレベルに高くすること。ある意味、今ままでのネットスーパーとは一線を画した世の中にまだない新サービスとも言えるもので、BizDevが「ユーザーにとっての理想はこうあるべきですよね」と口頭でサービスやオペレーションのイメージを説明しても、小売事業者に納得してもらうのはなかなか難しかったりします。その点、実際にプロダクトが動いている様子を見せながら「このほうが便利ですよね」と話し合えるのは、我々の強みです。「百聞は一見にしかず」で、プロダクトを見せると急に話が進むんですよね。

BizDevとしては、石田さんたちエンジニアがつくったプロダクトを通じて、イトーヨーカドーさんや今回のA社さんのような、理想的なパートナーに「10Xとなら使い勝手のいいネットスーパーを実現できる」と信頼していただきたい。そして、彼らの事業を成功させることで、ほかのパートナーからも「10Xと一緒にやりたい」と言っていただきたい。そうすることで、10Xの事業サイズも大きくなっていく。そのためにも最大の強みである「いいプロダクト」を起点に、どんどん広げていきたいですね。

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