商社→MBA→PEファンドを経て「プロダクトの強さ」を信じる理由
10Xで取締役CFOとBizDevを担当する山田聡。新卒では三菱商事に入社、Wharton MBA留学後にPEファンドのCarlyle Group(カーライル・グループ)を経て、2020年3月に10Xに入社しました。
入社時はメンバーとして入社し、半年後にCFOに就任した山田さん。彼の転職の経緯や10Xでの仕事について、代表の矢本と対談しました。
CFO山田聡(写真左)、CEO矢本真丈(写真右)
山田 聡 | @syamada0
取締役CFO / BizDev
三菱商事株式会社でロシア・カザフスタン向けの自動車販売事業・現地販売会社のM&A及びPMIを経験。その後、米系PEファンドであるCarlyle Groupに参画し、おやつカンパニーやオリオンビールの投資・PMIを実行。Wharton MBA(2017年)。10X以外にもVoreas北海道を始めとするスポーツチームの経営支援に関わる。
※記事内の写真は撮影時のみマスクを外しております。
メンバーとして入社した理由
矢本 : 改めて、山田さんの経歴と入社までの道のりを教えてください。
山田 : 新卒では三菱商事に入社し、自動車販売事業に関わっていました。在籍中にMBA取得のため渡米し、帰国後はPrivate Equityファンド(以降、PEファンド)のCarlyle Groupに参画。PEでは株主の立場から、複数の投資先の経営者と密に仕事をすることで実践的な経営スタイルを学びましたが、少しずつ「自分自身が経営に参画したい」という思いが芽生えていました。
投資家の方の紹介で矢本さんと始めて会ってからは、偶然家が向かいのマンションだったこともあり、「毎週土曜日の朝にお茶をする」というのを半年続け、最終的に入社を決めました。
矢本 : 最終的な決断の理由は何だったのですか?
山田 : 「10Xを創る」というミッションへの覚悟を感じたことと、それを実現できる優秀なメンバーが揃っていたことです。入社前に全員と1on1でお茶をしたり飲みに行ったりしたのですが、メンバーひとりひとりまでカルチャーが深く浸透していることを感じ、
「この会社ならユニコーンと言われる企業価値1,000億円に留まらず、1兆円・10兆円の企業価値の会社を作れる土台がある」と本気で感じました。「Googleの最初の21人」の話は有名ですが、今は12番目で入社できるタイミング。特に事業サイドは業務内容も余白だらけ。入社するなら今しかないと決めました。
矢本 : 実は山田さんには最初からCFOという肩書で入ってもらったわけではなく、「CFO候補として最初はメンバーからスタートしてほしい」と伝え、入社してもらいました。改めて、どうして受け入れてくれたんですか?
山田 : 2つ理由があります。1つ目は、まず1プレイヤーとして活躍できる環境を整えてからの方がいいと思っていたから。2つ目は、途中から経営陣として入ることの難しさを知っていたからです。
1つ目ですが、プレイヤーとして活躍するという意味では入社時点の自信は五分五分だったんです。大企業を相手にしたBizDevという点では前職までの経験が活きる自信はありましたが、プロダクトやテクノロジーについては経験が浅いので学ぶ必要があると思っていました。その状態で下駄をはいて入社すると、チームメンバーからも「大丈夫かな?」と不安を持たれるかもしれない。それよりも今の自分の実力と不確実性を加味したポジションからスタートしたほうが、周囲からも「実績を出して経営陣になったんだな」と見てもらえるかなと。一社員としてスタートした方が、結果的に信頼を得る上ではやりやすいと考えていました。
矢本 : たしかに山田さんは入社後、半分は知見の深いコーポレートファイナンスを担当し、もう半分でテック面のキャッチアップをしながらBizDevを担っていました。実績を立てながら同時に学ぶというのは、いい車輪の回し方ですよね。
山田 : 2つめは、自分がPEファンド(※プライベート・エクイティ・ファンド)にいたときに、既に事業のある会社に途中から経営陣として入ることの難しさを見てきたからです。PEファンドでは歴史がある会社を買収し、外部から経営陣を招聘したりしていたのですが、ハマるケース・ハマらないケースが明確にありました。それには実は前職での実績や本人の実力はあまり関係がなくて、優秀な人でも上手くいかないケースもありました。
例えば、リスクをとってガンガン攻めるぞ!というタイプの経営陣が入社したとして、その部下がみんな保守的でコツコツ真面目に積み上げるタイプだった場合には、カルチャーのミスマッチが起こり得る。特に途中から入る経営陣の場合、既にあるカルチャーに合わせていく必要があるので難しいんです。実際に働いてみないとフィットがわからない部分は絶対にあり、ミスマッチの確率はゼロにはできないと感じています。
その意味でも、いきなり経営陣として入社し、カルチャーが合わなかった場合、それはお互いにとって不幸なことだと思っていて。経営陣ならすぐに辞めるわけにもいかないし、一方でカルチャーが合わない職場でも仕事を続けなきゃいけない状況になってしまうのは双方に良くない。経営というのはカルチャーに対してもコミットする責務なので、そういうリスクも考えると、決断は2Wayドアにしておくのがいいんじゃないかと思ってます。
矢本 : 山田さんの場合、入社後半年はメンバーとして働いて実績を出し、その結果を持って経営陣になるという流れはとても良かったなと思っています。
山田 : 「フィットしてないな」と思いながらも色々な事情で辞められない、というケースって、実は結構起こりがちなんですよね。優秀な人材と会社、どちらも貴重な時間を浪費するのはもったいないし、究極的には社会の資源を無駄にしているくらいだと思います。だから今回、フィットを確認できたことは自分にとっても良かったと思っています。
CFOになってからの変化
矢本 : 山田さんは入社半年後の昨年9月から取締役CFOになりましたが、それでなにか変わったことはありますか?
山田 : 経営として考えるかプレーヤーとして考えるか、という意識が代わりました。それまではプレーヤーとして結果を出すことに7割の比重を置いていたのが、メンバーが増えてきたのもあり、今は3から4割ぐらいです。一方で、組織のマネジメントや方向性、矢本さんが注力している点について経営陣としていかに組織全体のスループットをあげるか?という意識を強く持ってやっています。
矢本 : なるほど。一方で、山田さんは引っ越しのダンボールの準備とか機材の手配、年末調整の取りまとめとか、細かいロジも自分で全部やってるじゃないですか?そのへんは、「なんで俺が...」とか思わないんですか?(笑)
山田 : 全然ないですね。(笑) 10Xにはそれぞれの分野のエキスパートがいて、「組織全体のスループットをどう上げるのか?」という考えを大事にしています。組織のベースとなるのって、快適に働く環境だったりすると思うので、それを整えたり、オフィス移転して新しい環境で皆がテンション上がり、いつもより10%良いパフォーマンスを出せたら、会社としてはすごく大きな成果になる、みたいな感覚ですね。
僕が好きな野球で言うと(※山田さんは東大野球部主将)、強豪校のグラウンドはめちゃくちゃ綺麗みたいな(笑)。気持ちよく練習できると上手くなるし、全体に対してレバレッジが効くんですよね。なので、環境整備はとても大事だなと思うし、雑務も含めて自分でやることで、みんなの気持ちを支えているんじゃないかと思ってます。
矢本 : オフィス移転のときの引っ越し作業は山田さん主導でやってもらいましたけど、みんな協力的でしたね。
山田 : 梱包作業を社員ボランティアで募集して「2人ぐらい来てくれたらいいかな」と思っていたら、全員すぐ協力してくれて、2時間想定の引っ越し時間が30分で終わりましたね(笑)
矢本 : 梱包が終わったら、「デスクないので家で作業します」って皆帰って、15時半には誰もいませんでしたからね(笑)10Xらしいなと思いました。
10XオフィスにはHARIBOのグミがたくさんあります
家族からの理解を得るためにしたこと
矢本 : 山田さんは商社、海外MBA、PEファンド、というところから10Xのようなアーリーフェーズのスタートアップに飛び込んでいるわけですが、周りにもそういう人は多いんですか?
山田 : 多くはないと思いますね。MBAの同期だと、同じような考えで起業したりベンチャーに飛び込んだりする人は1-2割弱。アメリカだともうちょっと多くて3-4割ぐらいでしょうか。
矢本 : そうなんだ。Wharton MBAなら3-4割がスタートアップ、スタンフォードMBAなら7割ぐらい起業するのかなと勝手に思ってました。
山田 : アメリカ人はそんな感じですけど、日本人は企業派遣が多いこともあり、まだ大企業派のほうが多いかなと思います。なかなか起業できるような環境になっていないというか。
矢本 : 給与や待遇面の問題なんでしょうか?
山田 : 不確実性の問題じゃないですかね。「起業やスタートアップで自分が本当に活躍できるのか」という不安が大きいのかなと思いますね。大企業にいる場合って、ある程度自分がどこまでいけるのかってわかるんですよね。それを捨てるリスクをとってまで、飛び出すか?ということだと思いますね。
矢本 : ぶっちゃけ、給与面もかなり落として入社していただいたと思いますが、周囲の方やご家族などからの反応はどうだったんでしょうか?
山田 : 僕はプロフェッショナルファームの中では本流じゃないというか、結構変わったタイプだったのかなと...(笑)もとからリスクとってガンガンやる人だったので、「いつかそうすると思ってた」というリアクションが多かったですね。
その点では家族のほうが、キャッシュフローの心配とかはされました。でも、そもそも10Xは給与はしっかり出していたし、あとは生活コストを多少見直してキャッシュフローを下げたりして。企業のPLと同じで、売上が下がってもちゃんと費用を見れば、営業利益は作れるんですよね。
矢本 : さすがCFO、プロ経営だ(笑)
山田 : 同じです(笑)だから、そんなに困ることはなかったです。家族にもちゃんと説明して納得してもらいました。
家族が気持ちよく働かせてくれる環境があるのは、長期的に働く上ではとても大事です。逆にプロフェッショナルファームって労働時間が長いので、短期的に家族との時間を犠牲にして働く人が多いんですが、サステナブルかというと結構怪しい。10Xはスタートアップですが、家庭優先、バランスをしっかりとろうという感じですよね。
矢本 : 10Xを起業したのは僕の第二子が生まれたタイミングだったんですけど、実は起業後すぐに子どもの病気が発覚して。家庭の中でもストレスが多く、大変な状況だったんです。起業したからといって、毎日24時に帰りますみたいな働き方はできなかった。だから、時間をかけるよりも効率を意識して働くという今のスタイルができたという背景があります。
山田 : なるほど、制約ありきで働いていたんですね。結果論ですけど、それは自分にとっても良かったと思います。プロフェッショナルファームにいたときは、自分の労働時間=生産性だったんですよね。例えば毎日他の人よりも2時間多く働けば、自分のスループットが1.2xになります。でもこれだと、頑張って1.5x、寝なくても2xぐらい。
時間でなんとかするよりも、「10倍の価値を作れるような仕組みを考える」ことが圧倒的に重要だと、10Xにきて思いましたね。時間に制約を設けた上で、成長できる方法を考えるから10xから逆算したアイデアが出てくるのだと実感しています。
前職経験の活きる点/異なる点
矢本 : 10Xに入社して、PEファンドでの経験が生きている点はありますか?
山田 : 契約交渉や事業計画についてたくさん触ってきた経験や、リーガル周りの折衝をゴリゴリやってきていたのは、10Xのパートナーである大企業との契約交渉において非常に役立っています。プライシングにおいても、双方のゴールを考えた上で、適切なラインでwin-winな計画を作るのには役立ってますね。
※山田の前職での経験については、下記noteもぜひご覧ください。
PEが教えてくれた企業変革のポイント|SatoshiYamada
矢本 : 逆に転職して、大きな違いはありましたか?
山田 : 「プロダクト中心」という会社は始めてなので新鮮な点は多いですが、サプライズというよりそれを自分で選んできたという方が近いです。一言で言うと、「影響力・信頼の獲得のショートカット」だと思っています。
伝統的な企業やコミュニティでは、年齢と経験を重ねたことで役職が上がり、一番影響力のあるポジションにつく。ただそのポジションにつくのは10年、20年とかかったりするわけです。実績とかネームバリューで勝負するという考えは、エンタープライズやプロフェッショナルファームのベースにあるもので、その組織の中ではある程度避けられません。
一方で、今の10Xのようなスタートアップは、影響力を得る方法として「プロダクトを見せて相手を納得させる」という武器があります。これは年齢とか関係なく、若い会社や業界での実績のない人でも、プロダクトの完成度次第で信頼を勝ち取り、影響力を持つことができる。若くして色々なことをやっていきたいと考えるとその手段が一番近いと、PEファンド時代から考えていたんです。なので、違和感なく入れましたね。
矢本 : 10Xも最初は献立アプリ「タベリー」を作っていたのが、この1年で一気に「Stailer」にシフトし、イトーヨーカドーさん始め大きいディールがいっぱいできているのは、プロダクトを使ってサードドアを開けまくっているということがありそうですよね。
山田 : SaaS系のビジネスって、まず最初はSMBから入り、徐々にエンタープライズにいく、というのが王道だと思うんですが、これって実績アプローチだと思っていて。時間がかかるし、手数が必要で、徐々に営業組織が大きくなっていく必要があります。その点だと、10Xがやっていることはだいぶ違うと思っています。
強いプロダクトや最近だとオペレーションの解像度の高さがすべての軸になっており、少しずつSMBをとっていくわけではなく最初からエンタープライズに導入を進めている。結果相手から求められるものも高いので、プロダクトやオペレーションの完成度が上がっていく。こんなに刺激的な仕事をアーリーステージで出来ているのは、プロダクトが強いからこそだと思います。
矢本 : 信頼を得るという意味において、プロダクトはカードの一つだし、実績もカードのひとつ。今後、「事業開発」も「プロダクト」も「オペレーション能力」も、全部がクオリティ高く、交渉カードの一つになるような会社として成長していきたいですね。今まさにできつつあると感じています。
山田 : 特に直近は、パートナー企業の1つの課題を解決するだけではなく、ビジネス全体のDXを支えるWhole Productになりつつあるので、10Xとしても色々な分野の専門家が組織として必要だなと感じます。
矢本 : 山田さんのケースのように「組織のスループットを10xする人」「事業のスループットを10xする人」をどんどん迎えていきたいですね。ありがとうございました。
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