「Stailer」リリースから4ヶ月でプロダクト責任者を権限移譲した話
開発不要でネットスーパーを立ち上げられる「Stailer」のプロダクト責任者は、CEOの矢本真丈からCTOの石川洋資へ──。
この記事で示す「プロダクト責任者」とは、プロダクトに責任を持ち、開発やグロースを進めていく役割のこと。10Xの核とも言える「Stailer」のプロダクト責任者交代となったのは、2020年秋頃のことでした。
しかし、Stailerがリリースされたのは2020年5月。なぜこのタイミングでプロダクト責任者を交代したのでしょうか?さっそく、その背景や目的を10XのCTOである石川にインタビューしました。
石川 洋資 @_ishkawa
Co-Founder, 取締役CTO
大学にて経営工学を専攻。在学中にスタートアップの創業メンバーとなり、iOSアプリの開発に取り組む。大学卒業後は面白法人カヤック、LINE株式会社、株式会社メルカリで新規アプリの開発に携わる。その後、メルカリで同僚だった矢本と株式会社10Xを創業し、CTOとしてプロダクト開発全般を担当する。
※写真撮影時のみマスクを外しています。
きっかけは事業におけるBizDevの重要度が上がってきたこと
ー今、Stailerのプロダクト責任者はCTOである石川さんが担当しています。もともとは、CEOの矢本さんがプロダクト責任者だったのですよね?
そうです。正式にプロダクト責任者としての役割を移譲されたのは2020年9〜10月頃。とはいえ、その少し前から権限移譲は始まっていました。
開発当初はタベリーとStailer、2つの事業が並行していたのですが、当時からStailerは10Xの事業として存在感の強いものになることは確かでした。そうなると、開発に着手する以前からステークホルダーである小売などのチェーンストア事業者とやりとりがあり、パートナーの現場や商談の進め方を最もよく知る矢本さんはBizDevに集中したほうが、全社に与えるインパクトは大きい。そのため、僕がプロダクト関連業務をすべて巻き取ることになり、プロダクト責任者になったのです。
2020年9月、CEO矢本からSlack全社チャンネルへの投稿。バリューの1つ「背中を預ける」のリアクションが押されています。
ーでは、Stailerの前身とも言える献立アプリ「タベリー」を開発していたときのプロダクト責任者は矢本さん?
はい。具体的には、タベリー時代は画面をつくるときのドラフトは矢本さん、開発過程からは僕が入り、調整しながら開発していく流れでした。まぁ、これは当時、矢本さんと僕しかメンバーがいなかったこともありますが(笑)。
Stailerでは、最初に画面をつくるときのドラフトは僕が担当し、矢本さんにも少しレビューしてもらっていましたね。ですが、ユーザー体験部分の意思決定は、基本的には僕が引き受けていました。
ープロダクト責任者をどこかで引き継ぐのは予定していたんでしょうか?10Xから逆算しての決定?
いえ、当初からそこまで逆算できていたわけではなく(笑)。ただ、事業を大きくするには、適切に役割変更できたほうがいい。それに、10Xの事業は、BizDevとプロダクト開発の両輪がないと進められないけれど、社内はプロダクト開発の方が人数が多い状況。Stailerを使ってくださる小売事業者が今後もどんどん増えていくことを考えると、矢本さんがこれまでの役割を手放すべきだったんですよね。
石川(写真左)矢本(写真右)は向かいの席。オフィス出社時にはよく雑談しています。
「タベリー時代のプロダクト責任者」との違い
ー「プロダクト責任者」ということは、開発全体はもちろん、問題の発見やアプローチ、グロース、カスタマーすべて担当している?
矢本さんがプロダクト責任者だったときはそうでしたね。でも、僕は少し違っていて。現在は、データを起点とした問題発見はグロース担当である飯山秀人さん、お客様の声を起点とした問題発見は濱坂愛音さんを中心としたメンバーが担当しています。僕がプロダクト責任者の役割を一気に引き継いだというより、他のメンバーとそれぞれ分担して引き継いだというほうが正しいかもしれません。
ーStailerの開発は、イトーヨーカドーやフレスタなど、各小売事業者向けに行うことになりますよね。それぞれ、どういった対応をしているんでしょうか?
各小売事業者とのコミュニケーションには、必ずBizDevメンバーに入ってもらっています。彼らはパートナー企業と密にコミュニケーションを取っていて、問題発見が早いし、解像度も高いためです。そこで発見された問題に対して、どう解決するかを一緒に考えるのが僕の仕事。自分自身の解像度を上げるために、スーパー事業者の方々と直接話したり、現場に行ったりもします。そして、色々なところからインプットした情報を踏まえて、最終的に汎用な形でStailerというプロダクトに落とし込みます。
1人で全部やる→チーム総力への転換
ープロダクト責任者になってからの変化は?
矢本さんが1人で担当していた頃に比べて社員が増えたおかげで、チームとしてプロダクトに向き合えるようになった気がしています。例えば、先ほどお話ししたとおり、グロースは飯山さん、データ分析は副業で関わってもらっているアナリストの方が担当。僕は直接的に関わらない分、プロダクトのUXを考える時間に費やしています。今まで1人でやってきたことがチームでできるようになり、プロダクトに広く深く関われることが一番大きな変化かもしれないですね。
ソフトウェアエンジニアの三宅(写真左)も、デザインを作ることも。各メンバーが領域横断的に仕事をしています。
そして、この変化は会社として大きな進歩だったと思います。1人でやるのは方針の擦り合わせや期待値調整が不要というメリットがありますが、できることが個人の限界で決まってしまいます。一方で、チームでは方針の擦り合わせや期待値調整は必要になりますが、1つ1つのことに向き合う時間の総量が増え、できることが増えるというメリットがあります。今のチームはまだまだ少数ですが、これからやるべきことが増える今のタイミングで1人からチームへの転換という一歩踏み出せてよかったです。
ー今後、石川さんはプロダクトチームをどうスケールさせていきたいですか?
現在、僕が担っている領域は開発・デザイン・プロダクトマネジメントの3つ。グロースやBizDevは横目で見ています。今後は幅を広げながらも深度を深めていくため、プロダクトマネジメント・デザイン・開発、それぞれをリードできる仲間を増やしたいです。
そして、ゆくゆくは僕が矢本さんから権限移譲されたように、僕もプロダクト責任者の役割を手放すタイミングがくると思います。今回のように、事業のフェーズに応じて適切な権限移譲をして、会社全体のできることを増やしていきたいですね。
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