Stailerは「むっずかしぃぃ!」「でもたのしぃぃ」10Xエンジニアが明かす開発現場でしか味わえない“やりがい”

2021/2/26

「Stailerは、ネットスーパーのアプリを立ち上げられるサービス」とだけ聞くとシンプルに感じますが、実は、下記のような2種類の小売事業者をターゲットにしています。

- すでにネットスーパーを運営している小売事業者
- まだネットスーパーを運営していない(店舗のみ)小売事業者

それぞれの事業者にとって、ネットスーパーを立ち上げるためのニーズも開発手法も異なります。そのため、Stailerの開発には特殊な複雑性があるのです。さて、その中身とは?今回は「すでにネットスーパーを持っている小売事業者」「まだ持っていない小売事業者」をそれぞれ担当している山口和輝@yamarkz と石田光一@wapa5pow に話を聞きました。

石田 光一 @wapa5pow  (写真左)
Software Engineer
1児の父。グリー『探検ドリランド』、gumi『海外版ブレイブフロンティア』等のソーシャルゲームのエンジニアとして活躍。企画・分析・開発とすべてに携わる。その後LITALICOでは全社基礎構築の技術支援を行う。フリーランスとしてスタートアップの技術支援も。

山口 和輝 @yamarkz (写真右)
Software Engineer
株式会社Gunosyにて新規メディアの開発とグロースに携わった後、子会社であったLayerXの立ち上げとブロックチェーン技術の研究開発、技術コンサルティング業務を経験。 株式会社Housmartで中古マンションメディア「カウル」やSaaSプロダクト「プロポ」の開発を経て、10Xへ。サッカー観戦と料理が趣味。

なぜ、Stailerは当初から「サイトコントローラー」だったのか?

ー今回は、候補者の方から聞かれることも多い「Stailerを開発する上での課題」について聞いていきたいと思います。まず「すでにネットスーパーを持っている小売事業者」についてです。このターゲットに向けて開発するとき、Stailerではサイトコントローラーを使っています。ネットスーパー側のAPIを提供してもらう方法もあったと思うのですが?

山口 : おっしゃるとおり、ネットスーパーの基幹システムにあるAPIを提供してもらう方法もありました。しかし、それには小売事業者や基幹システムを担当する開発会社にAPIを新規開発・提供してもらうためのコミュニケーションが必要で一定以上の時間をかけて交渉することになります。10Xとしては、Stailerでネットスーパーアプリを早く提供したかった。そのため、長い時間をかけて交渉しAPIを待つよりも、自分たちのオーナーシップで先に進められるサイトコントローラーの採用を決めたんです。

そしてもう1つ。先ほど「APIはそう簡単に提供してもらえるものじゃない」とお話ししましたが、だからこそ重要なのがAPIが必要である根拠を示せるかどうか。Stailerは2020年5月にリリースし、イトーヨーカドーが導入。同年12月には広島のスーパーフレスタも導入し、両社で着実にアプリ経由のネットスーパー売上を伸ばしています。「Stailerでネットスーパーアプリをつくれば売上が伸びる」「より伸ばすにはAPIを提供するのが一番いい」と実績を示せば、小売事業者も開発会社にも納得いただけます。そのための交渉材料を増やすためにも、まずはサイトコントローラーでStailerを展開することになりました。


イトーヨーカドーネットスーパーではPMも担当する山口さん。

ーでは、ゆくゆくはサイトコントローラーではなく、APIでのアプリ開発に切り替えていく?

山口 : ですね。サイトコントローラーは、すでにあるWebサイトをStailer側で操作し、ネットスーパーを利用するために必要な情報を連携。アプリ上で買い物をできるようにしました。しかし、APIで連携するより、サイトコントローラを利用する方法では情報の連携に時間がかかるうえに、予期せぬエラーも起こりやすい。そのため、ところどころでお客さま体験を犠牲にしているところがあるんです。

ネットスーパーでは、多くのユーザーが何万とある商品のなかから20〜30点を選び、まとめて買っています。なので、カート追加に時間がかかりやすいんです。現在はカートに追加し、決済するまでに10秒ほどかかっています。でも、APIを提供してもらえば2〜3秒で完了できる。Stailerとしては、将来的にサイトコントローラーをなくし、APIでの開発に切り替えていきたいですね。

「新規でネットスーパーを立ち上げる」からこその難しさ

ー 一方で「まだネットスーパーを持っていない小売事業者」の場合、10Xでゼロからネットスーパーを開発することになるんですよね?

石田 : そうですね、Stailer側で新たに立ち上げることになります。そのため、商品管理、アプリでの商品表示、ユーザーが購入した商品をピッキング・パッキングして配送する部分など一つひとつつくっていくので、なかなか大変です。

ー店頭にある商品のマスターデータは、どうやって連携させるんですか?

石田 : ネットスーパー用の情報を小売事業者側に準備していただいています。小売事業者側に情報がなくても、スーパーにはPOSシステム(販売時点管理)があり、そこにマスターデータがあります。ただ、POSシステムにある情報が、必ずしもそのままネットスーパーで使えるわけではなく…。商品名や価格をどうするかは、小売事業者の方々と話し合いながらつくっていく必要があります。

ーとなると、小売事業者それぞれに対応していくことになりますね。

石田 : 往々にして、POSシステムにある情報だけでは足りないことが多いです。商品名や画像がなければ、効率よく集める必要がある。そこで今、スーパーのスタッフが撮影した商品画像をアプリに取り込めるようにする仕組みを作ろうとしています。商品マスターデータを効率よく充実させていく仕組みは試行錯誤中ですね。


毎週水曜日のオフィスデーは対面でのコミュニケーションに集中

ー新たにネットスーパーをつくるときの仕様は10Xで決めているんですか?

石田 : はい、基本的な機能はStailerに揃っているので、それでできたアプリを導入先の小売事業者に見てもらい、フィードバックを反映させていきます。仕様を細かく議論するというより、ネットスーパーを導入したい人たちが使いやすいようにするための作業をしているイメージですね。現場で細かくデモを見てもらうことが重要です。

ー実際に現場でデモして、仕様を変えた事例などはありますか?

石田 : たくさんあって全部は思い出せないんですけど(笑)。
最近だと、ピッキングですかね。ネットスーパーでは、ユーザーが商品を注文し、手元に届くまでの間に「店内から購入された商品を集める(ピッキング)」「商品を袋詰めする(パッキング)」という作業があります。当初、10Xではピッキング・パッキングの仕組みとして「バスケットレーンピック(ピッキング時にオーダーごとに分けて商品をピッキングする作業方式)」を考えていました。でも、実際に現場でやってみると「総量ピック(複数オーダーの商品をまとめてピッキングし、あとで仕分けする作業方式)」のほうが人が動く距離が少なく、スタッフが疲れにくいとわかったんです。その気づきをもとに開発も「総量ピック」に切り替えました。


考え込む山口さんと、楽しそうな石田さん。何の話だろう...

ネットスーパーを使うユーザー、4つの属性

ーStailerで提供しているネットスーパーアプリのユーザー属性も聞きたいです。以前からWebサイトのネットスーパーを使っている人もいれば、ネットスーパーアプリをきっかけに使い始めた人もいると思います。それぞれ、どんな行動パターンですか?

山口 : すでにWebサイトのネットスーパーを利用したことがあるユーザーは、かなり使い慣れていますね。特に、日用品の購入が手慣れていて、なかには自分でリストをつくり、そのなかから必要なものをポチポチと選んで買っている人もいました。

アプリをきっかけに使い始めた人のなかには、「そもそも自宅のエリアでネットスーパーを使えるかどうかがわからない」人も多いです。そういったユーザーのために、Stailerで構築したネットスーパーアプリでは、インストール後に最寄りの店舗を探す機能を導入。もし見つからなかった場合、「あなたがこのアプリを入れても、サービスは使えません」と出すようにしました。

ー日常的に使われるからこそ、アプリのUI/UXがユーザーへ与える影響は大きそうです。

山口 : そうですね。僕らが感じている課題は「実店舗、または既存のネットスーパーで既にお客様がしている体験をアプリで最適化すること」。

そもそも、スーパーでの買い物は4つに分類できます。それが「いつもの買い」「あわせ買い」「ついで買い」「試し買い」。この中で、全く新しい商品に挑戦する試し買い以外は、持ち運びの手間をなくせるという意味でネットスーパーが最適なはずなんですよね。アプリのUI/UXでは、いつもの買い・あわせ買い・ついで買いをしやすくなるようにしたい。例えば、鍋をしようと考えながら食材を見ているときに「スープならこちらはどう?」とレコメンドされるようにしたり。店舗での購買行動をアプリに落とし込んだとき、今まで以上に考える時間や手間をなくし、よりスムーズにできると思っているんです。

また、後々は試し買いの体験も良くしたいですね。将来的にはR&DやBizDevと協力し、新たな商品との出会いも創れるようにしたいです。

石田 : あと、お客様がネットスーパーそのもののサービス形態を理解する時間も必要だったりしますよね。AmazonやZOZOのようなECでは、商品を受け取るタイミングはそこまでシビアではありません。しかしネットスーパーは、食品の鮮度や受け取りのタイミング、食材を使いたいタイミングが非常にシビアです。そのため、注文時に配送の時間帯を指定し、その時間帯に家で商品を受け取ります。この仕組みが初めて使う方にとっては「なんだこれ」となりやすく、離脱の原因になっていることも分析結果でわかっています。

そのため、Stailerでは商品を選んだ後に配送の時間帯を選ぶ、もしくは配送時間を選んでから商品を買えるようにしました。あとは、配送枠を増やし、柔軟に受け取れるようにしたいのですが、そこにはまだ至っていません。

山口 : ここに関しては、各小売事業者が各々でノウハウを溜めながら改善しようとしていますが、まだベストな体験には程遠いと思っています。僕らから「ベストなネットスーパー体験はこうじゃないか?」と提案していきたいですね。

エンジニアが語る「むっずかしいぃ!」「でも楽しい」の背景

ーStailerを導入する小売事業者が増えれば、当然ながらシステムは複雑になっていきます。そのあたりで、困っていることはありますか?

石田 : 基本的には、カスタマイズせず、共通化した価値を小売事業者に提供していきたいと考えています。でも、まだ共通化しきれていない部分もあります。。共通化できるところと、できないところを見極めて、壊れにくい仕組みを作りたいですね。

ー話を聞いていると、既存のシステムとの連携や複数のパートナー向け対応など大変そうですが、ぶっちゃけ、開発は結構辛いんでしょうか?

山口 : 確かに、今話した内容だけを聞くと辛そうかもしれないですけれど(笑)。なんて言うか、開発現場からすると、難問を解く楽しさがあるんです。10Xが向き合う課題は、多岐にわたります。だから、飽きが来ない。ビジネスとしてもBtoBtoCのような感じで、ユーザーに向き合うこともあれば、小売事業者に向き合うこともある。どちらにも比重が偏ることなく、いいバランスで設計・実装することも求められます。難しいけど、めちゃくちゃ楽しいですね!


めちゃくちゃ楽しいと語る山口さんを見て嬉しそうな石田さん。

石田 : 僕は、小売という大きな産業のなかで、誰にもわからない問題に片足を突っ込んでいて、そこで感じる体験の一つひとつが楽しいですね。それも、10Xの場合は想像だけで終わらさず、現場へ行って試すこともできる。つくるものも多いし、それ以上に向き合うべき膨大なユーザー、データがある。そこにアタックできるのは、ほかのベンチャーにはない経験になります。

ーなるほど。大手小売事業者を相手にすることも多いので、問題もより難しくなる。その反面、解くべき問題が多いからこその楽しさがあるということですね。ありがとうございました!

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