社員13人のスタートアップが小売業界最大手とパートナーシップを組めた理由

2020/6/8

5月27日に開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な「Stailer」を公開した株式会社10X。導入パートナーとして小売業界最大手の1社である「イトーヨーカドー」のアプリを提供したことについもて反響をいただきました。「なぜ社員13人のスタートアップが小売業界最大手とパートナーシップを組めたのか。」「どういった姿勢で今後パートナーと向き合っていくのか。」鍵を握るのは事業開発と呼ばれる職種のメンバー。社内ブログ第三弾は今年3月に入社し、事業開発とファイナンスをリードする山田聡さんです。

山田 聡 | @syamada0
Biz Dev/Finance
三菱商事株式会社でロシア・カザフスタン向けの自動車販売事業・現地販売会社のM&A及びPMIを経験。その後、米系PEファンドであるCarlyle Groupに参画し、おやつカンパニーやオリオンビールの投資・PMIを実行。Wharton MBA(2017年)。10X以外にもVoreas北海道を始めとするスポーツチームの経営支援に関わる。

「大手だから最優先」ではない。10Xらしい判断基準と優先順位のつけ方

-Stailerを公開して、2週間経ちましたね。

そうですね。半年以上かけて準備してきたので発表した時は感無量でした。ただもちろんここがゴールではなくスタート。大変有り難いことに、たくさんの反響やお問い合わせを頂いており、数十社と具体的な提携へ向けた協議をさせて頂いています。

-有り難いですね。早速ですが、山田さんの仕事内容を教えてください。

「ファイナンス」と「事業開発」の2つをリードすることです。

「ファイナンス」については、成長資金の確保や事業の拡大を支える組織体制の整備です。「組織のスループットを10Xにする」をミッションに業務を進めています。
「事業開発」については大きく2つミッションがあり、1つ目は「Stailerの導入促進」。具体には、パートナーとなる小売事業者のリード獲得、パートナー事業者からの信頼獲得、パートナーのネットスーパー事業戦略コンサルとその中でのStailer導入を描き、プロダクトチームに繋いでいくこと。2つ目は例えば物流など「Stailerの提供機能強化へ向けた外部との提携検討」です。今日は主にこの事業開発についてお話しできればと思っています。

-すごくやることが沢山あるように思えます。事業開発は山田さんも含めて2名体制ですが、業務はどのように優先順位をつけているのですか?

主に3つの判断基準を定めてドキュメント化し、それを基に総合的に判断しています。

1.逆算して考えた時にお互いが中長期的に重要なパートナーになりうるか 
2.パートナーもDXに本気で向き合っているか
3.その取り組みを通して産業に10xなインパクトを与えられるか

このような基準を踏まえると、必ずしも「大手だから最優先」というわけではありません。我々のバリューにある「10xから逆算する」は最も大事なことであり、常に意識していることです。またパートナーや、パートナーの店舗やサービスを利用しているお客様との対話を通じて「ジョブ」(サービス利用を通して成し遂げたい目的)を明確にすることも大事にしています。そしてどんなに忙しくても「判断した結果だけでなく、その背景がわかるよう都度ドキュメントを残していく」ようにしており、これはとても10Xらしいと感じています。こうした前提が共有されていることで、後から新しく入社した人も自ら情報を読み解き、正しい判断ができます。「自律する」というバリューを体現している事例の一つだと思います。

「事業開発の判断基準」のメモの一部


小売業界最大手とパートナーシップを組めた鍵。それは名刺代わりの機能と、一緒に描いた未来戦略

-Stailerの導入パートナーとして、小売業界最大手の「イトーヨーカドー」がいます。どういったきっかけで、導入にいたったのですか。

10Xが2年前から提供してきた献立アプリ「タベリー」のシームレスな買い物機能を通じて「彼らがほしいプロダクトがすでに実現されていた」ことです。初めてお会いするまで、10Xの名前も存在も知られていなかったのですが、どんな会社説明資料よりもプロダクトが名刺代わりになりました。

-そこからどうやって信頼を得て関係値を築いていったのですか?

「タベリーのシステムや知見をベースに、ネットスーパーでこんなことができないか」という議論を先方から頂く形で関係がスタートしました。自社プロダクトを構築してきた知見や、国内外の事例リサーチを活用しながら「ネットスーパーのあるべき姿」を提案していったのです。さらに「絵に描いた餅」で終わらせないために、その実現方法についての議論を重ね、数ヶ月かけて信頼を重ねていきました。最終的に「ネットスーパーの未来戦略を練るための相談にのってほしい」と依頼があり、そこからStailerというサービスへの発展・導入へと至りました。実は、この段階ではまだ私は入社していないのですが、昨年夏から代表の矢本とは毎週会っており、何度も話し合いを重ねていました。先方からの依頼を聞いたときは、思わずガッツポーズでしたね。


「肉を切らせて骨を断つ」。規模は違えど言うべきことはしっかり言う。

-Stailer公開後の現在、どういったマインドで日々エンタープライズと向き合っているのですか?

ベンチャーのスピード感からすると、エンタープライズはなかなか動かず、正直フラストレーションが溜まる事もあります。ただ組織としてのコミットメントを一度引き出せれば、社会に与えるインパクトはとても大きいです。エンタープライズは意思決定の仕組みが組織横断的で複雑。例えば会話の中で、意思決定者にとって重要な論点は何なのかを上手く探り出すことは大事です。それを踏まえて担当者が意思決定者をどうやったら説得しやすいか、場合によっては資料の体裁も含めて考えるなど常に相手の立場になって考える癖はつけています。

一方で「肉を切らせて骨を断つ」ではないですが、言うべきことはしっかり言いますし、互いが対等なパートナーであることも意識しています。相手にとって耳障りがよくないことでも、中長期的な両者の事業成長に繋がることであれば、はっきりとスタンスをとって意見を言います。易きに流れず、未来の理想の絵姿を元に議論していく。この考えに共感してくれる事業者と一緒に小売の未来を作っていきたいと考えています。我々自身もいわゆるSkin in tha Game(身銭を切る)のスタンスで、パートナーの小売事業者とリスクを共にする事業モデル(固定の開発費ではなく、小売のEC流通額との連動フィー)にしていることが、その意思表示です。

-最近公開したホワイトペーパーはどういう意図で作成されているのですか?

ホワイトペーパーは我々の事業戦略を示すものでもあり、10Xがリサーチを通じて得た知見を広く社会に共有して未来を提示することは意義深いと思っていますし、我々から情報発信することで、未来の小売の絵姿をイメージして頂ければと思っています。副次的な効果として、限られたリソースの中でどの事業者がDXに興味をもっているか、どのくらい本気なのかを判断する材料にもなっています。

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入社の決め手は代表の覚悟と、「背中を合わせる」ことが出来るチーム

-山田さんの経歴と入社までの道のりを教えてください。

新卒で三菱商事に入社しました。その後MBA取得のため渡米し、帰国後米系Private EquityファンドであるCarlyle Groupに参画した後に10Xへ入社しました。MBAは貴重な経験で、プロフェッショナルな経営とは何かを体系的に学ぶことができました。自分なりに出した結論としては、「組織の力をどう高めるか」と「戦略のシャープさ」の2つです。PEでは株主の立場から、複数の投資先の経営者と密に仕事をすることで、より実践的な経営スタイルを学びましたが、少しずつ自分自身が経営に参画したいという思いが芽生えてきました。同時に今後の産業の肝になるTech領域にも興味が湧き、その軸で複数の経営者を紹介して頂く中で昨年夏に10Xの矢本と初めて会いました。その後はマンションが目の前同士だった偶然もあり、毎週会っていました。

-最終的な入社決断の理由は何だったのですか?

矢本の「10Xを創る」というミッションへのブレない覚悟を感じたことです。大きな産業を変革するには20-30年ブレずに取り組んでいく覚悟が必要です。そしてもう一つ、10xを実現できるオールスターチームがプロダクトとグロースメンバーに揃っていることも決め手でした。そのタレントを引き寄せる会社の強いカルチャーやビジョンがあることを、入社前に全員と1on1したことで確信しました。この会社は「いわゆるユニコーンと言われる1,000億円に留まらず、1兆円・10兆円の企業価値の会社を作れるポテンシャルがある。」本気でそう感じました。「Googleの最初の21人」の話は有名ですが、今は12番目で入社できるタイミング。特に事業サイドは業務内容も余白だらけ。入社するなら今しかないと決めました。

事業開発は13番目に入社した赤木と2名体制

立っているのは産業変革のど真ん中。不確実性に一つずつ向き合って10xを創りたい

-10Xの事業開発で魅力を感じる部分はどんなところですか?

スーパーのEC事業は何より相手企業にとっても事業戦略のコアであり重要性も高いので、求められる期待値が違います。この点は、一般的な業務支援的SaaSと大きく違う点です。そのため先方担当者もレイヤーが高い人が多く、自身も経営レベルの視座が必要であり、そのレベル感の議論ができることは大きな魅力だと感じています。また新型コロナウイルスの影響でネットスーパーの需要は拡大し続けており、今まさに産業変革期のど真ん中です。そのため社会的意義も大きく感じます。

-事業開発という職種は多くの不確実性と対峙していますが、どのように向き合っていますか?

通常の企業では、不確実性が高いことに向き合う場合に、アクションしない、もしくは勝手に決めつけて動くことが多いですが、両方避けるべき行為です。不確実なことを明確にし、動きながら少しずつ明らかにしていく、実験的なプロダクトやファクトを重ねる、まさに「小さく実験し、事実を集める」という「10xから逆算する」のバリューを体現することが重要です。さらに今後は、ナレッジを貯め戦線を広げる意味でも自由に動ける事業開発のメンバーも重要です。実はインバウンドだけでなく、アウトバウンドもやっていてトライ&エラーを積んでる状況なのですが、リソースの問題もあり不十分な状況です。

-事業開発もメンバーを募集していますが、どんな人と一緒に働きたいですか?

全職種当てはまりますが、「10xを創る」というミッションと3つのバリューに共感する人です。付け加えて、事業開発職は事業パートナーと本質的な信頼関係を構築する必要がある職種。そのためには、経営レイヤーでの議論が出来てそれを楽しむこと、そのための基礎となる知的好奇心や知的体力、それをラーニングする力がある人と働きたいです。

-最後の質問です。山田さんのTwitterのプロフィールに「小売王の参謀」とありますが、山田さんの目指す参謀を教えてください。

具体的な参謀論はこれから積み上げていきたいと思っていますが、歴史を見ても世の中に変革を起こしてきたリーダーの側には常に側近がいて、ビジョンを共にしながら様々な障壁を乗り越えるサポートをするのが参謀の存在であると思っています。孤独と言われる社長に寄り添う存在となりたいですね。現在は、任せてもらえる領域を増やしたいと日々私も奮闘中です。

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