みんな、野菜ピックしようぜ!PEファンド出身者が転職直後に現場で奮闘した話

2022/1/17

本日は、Corporate Strategy 上村さん @_nauya の個人ブログに投稿されたエントリ(「Why you should pick a vegetable than create another spreadsheet」)を日本語訳したものを掲載します。
上村さんが2週間スーパーマーケットの現場に赴き、商品のピックアップ作業を通じた発見や、ご自身の仕事のやりがいについて書かれています。

Why you should pick a vegetable than create another spreadsheet


みんな、野菜ピックしようぜ! 

Life update: PEでの短期修行期間を経て、東京のリテールテック系スタートアップに初の戦略担当として参画しました。10Xは、オンライン小売(主に食料品店やドラッグストア)領域を変革し、購買体験をできるだけスムーズにするプラットフォームを提供しています。
Zero Topic - ゼロトピック -:Apple Podcast内の#197 一人目Corporate Strategy (w/ アニマル上村 @_nauya)

10Xへ転職してすぐ、スーパーマーケットの実際の業務に飛び込むことになりました。以前、外食企業で働いたときに、店舗でレジやサーバーの仕事をした経験はありました。それはそれで役に立ちましたが、スーパーマーケットでの仕事は全くの未経験。2週間、野菜のピッキング(売り場から物を持ってくる)とパッキング(箱詰め)をしてみての収穫を紹介します。

オンライングローサリーの仕組み(日本のケース)

オンライングローサリーの仕組みは、3つのステップに分かれています。下の表をご覧ください


体力的にしんどい(ことを体感する)

運営形態は一般的に2種類あります。(a)センター型: Amazonの仕組みの運用から想像がつくと思います。スーパーは広い倉庫を所有するか借りて、センターでピッキングとパッキングを一緒に行います。(b)店舗型: もう一つのタイプは、今のところ日本では主流かもしれません。カートやバスケットを使って、実際の店舗スペースで野菜やバナナなどの商品をピッキングします。普通のお客さんと同じ場所でピッキングし、スーパーのバックヤードに持ち帰り、梱包して出荷します。

作業を通して、肉体的な苦痛があります。4〜5時間ノンストップで立ちっぱなし、歩きっぱなしですし、時には2リットルの水14本、30kg(≒66ポンド)の注文を受けることもあります。私のような比較的健康で若い男性でも重いのです。また、荷造りの最後には、箱の数が正しいかどうかをチェックする必要があります。箱に貼られたバーコードを一つ一つ読み取って、実際の荷物の数と合っているかどうかを確認するのです。箱の山を上下に動かしながら、まるでジムのスクワットのように歩いていくわけです。私は日頃から体を鍛えていて、基本的に健康なのですが、スーパーで働き始めて2日目に背中に痛みを感じました(生まれて初めてもみほぐしに行った)。現実には、スーパーマーケットのバックヤードで働くほとんどの人々は、40−50代の女性です。それがどれほどしんどいかは想像に難くないでしょう。

私が働いているのは、パートナー(=スーパーマーケット)がこうした食料品のオペレーションを行えるようにするソリューションを提供する会社なので、日々野菜やバナナをピッキングしているのは私たちではありません。物理的にどれだけタフかを知ることは、製品開発には直接的には重要ではありません。しかし、物理的な厳しさを知ることで、オペレーションしている人たちとパートナー側の企業の人たちとの共通言語を増やすことができます。彼らが要望やクレームを出すとき、求めているのは解決策かもしれませんが、時には日常生活で感じている痛みへの共感かもしれません。例えば、「このアボカドはおいしくなさそうだから、うちに来て取り替えてくれ」というような無理な要求をするエンドユーザーと向き合うのは、彼らです。雑談をしながら一緒に作業(ピッキング&パッキング)をすることで、別のコミュニケーションパスが開かれ、コミュニケーションが改善される(&コミュニケーションコストが下がる)こともあると感じました。

新たな武器(変数)を手に入れる

私は、リテールテック企業で経営戦略の仕事に携わっています。私のキーコンピテンシーと主なミッションは、企業戦略を描くこと、財務分析を行うこと、あるいはマネタイズモデルを設計することです。スーパーマーケットでの勤務は、経営戦略職のJD(Job Description)の範囲外であり、先ほどのミッションに直接影響を与えないかもしれません。しかし、現場の実態を知ることは、戦略をより明確にするために非常に有効です。

また、自分の作ったアクションを検証するのにも役立ちます。私が米国西海岸の外食企業のポートフォリオ・マネージャーとして働いていた時も、同じことを感じました。私は、財務的な観点からすべての数字を把握し、食費に影響を与えるより良いポーションコントロールの方法を考えようとしていました。問題は、標準的なポーションよりも多くの魚(例えば、サーモンやマグロ)を提供しているようで、これが想像以上に大きな食料原価増になるということでした。一見、1スクープに対して過剰な限界ポーションに見えるかもしれませんが、それだけで簡単に数パーセントの食料原価の上乗せになってしまいます。

スプレッドシートやオペレーションフローを見る限り、標準的なポーションを提供することは超複雑な作業ではないように思えたので、なぜそうなっているのか不思議に思っていたのです。標準的なオペレーションは、ポーションの一貫性を保つために、盛り付けの際にスクープの上部をカットすることでした。そこで、日本からカルフォルニアに飛び、店舗に入り、サーバーとして丸一日体験して解明することにしました。

スプレッドシートを前にしたときは、私は、お客さまを目の前にしたときにスクープの上部をカットすることが、サーバーにとってどのような精神的意味を持つのかに気づいていませんでした。レストラン業界で働く人は、自然と、人にサービスをすること、良いサービスを提供することが好きな人がほとんどです。スクープの上部を切って、マグロやサーモンを標準的な分量にすると、ケチに見えるし、文句を言うお客様もいらっしゃいます。スクープの上部をカットすることでポーションをコントロールするのは理にかなっていますが、それでは店の人に精神的なプレッシャーを与えてしまう。そこで、マグロやサーモンをいくら載せても標準を超えないように、スクープを小さくして、最終的に私たちの望む利益率を確保できるようにしました。


私は、戦略というものは、事業の細部にある詳細な現象に左右されることなく、トップダウンで構築すべきと考えています。しかし、ときにはスプレッドシートを前にするよりも、実際のお客様や現場の人々と向き合う方が、具体的で実行可能な戦略を構築することができるのです。

スーパーマーケットにて研修していた時間は、まだ私が派手な戦略を思いつくのに役立ったわけではありません。しかし、私たちの売上となるお金がエンドユーザーから店舗のオペレーション、そして最終的に私たちの手元に届くまでの流れを理解するのに役立ったことは確かです(以前書いたお金の流れを理解する重要性という点にもつながりますが)。また、スプレッドシートに書かれている各費用の項目がどれだけ改善の余地があるかということも実感でき、他の変数にもアクセスできるようになった気がします。

変数に関していえば、各変数の弾力性を知るだけでなく、その変数を打ち出す能力を持ったことは、大きな副次的収穫でした。例えば人手不足でオペレーションに問題がある時、実際に来て助けることができます(今でも制服がクローゼットにあります)。マクロ的に見れば、1FTE(=自分)を店舗オペレーションに加えるだけで、それ自体の経済効果はあまりないですが、コミュニケーションを改善したり、人間関係のトーンを整えたりすることはできるだろうと思います。

企業戦略の仕事は、日常生活でビジネスに影響を与える他の仕事と比べると、短期的には目に見えない、漠然としたものであることが多い。だから、財務上の変数を(例えばバナナのピッキングを通して)自分で叩きにいけると思えることは、気持ちのいいものです。

素直に、楽しい

経営戦略などのホワイトカラーを含む企業の仕事は、時に自分が事業そのものやお客様に貢献しているという実感が湧きにくいことがあります。一方レストランでもスーパーマーケットでも、オペレーション業務には充実感を感じやすい面があるかもしれません。

一日の終わりに、肉体的な疲労を感じながら、お店の食料品を買いにスーパーに通うのが億劫、あるいは通えない人たちのために、野菜をピッキング、パッキングして届けるという過程の一部に貢献したことを実感できます。その野菜のピッキングが生み出す売上の多寡は別として、これはとてもやりがいのあることです。特にこのリモートワーク環境下では、意味のあることをしたという、昨日より少し良い気分で寝ることができるようになるかもしれません。

また、これまでの人生であまり関わりのなかった人たち(例えば、私+40-50代のパートの女性7-8人)と背中をあわせ、チームプレイをする中でつながりを持つことは素直に楽しいことです。

Twitter : @_nauya
Blog : https://medium.com/@nauya


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