レベニューシェアモデルでネットスーパーの普及を後押し。Stailerの事業価値とは?
10Xの歴史は献立アプリ「タベリー」から始まり、その思想は、開発不要でネットスーパーを立ち上げられる「Stailer」に続いてます。
現在Stailerは、大手スーパーであるイトーヨーカドーが「イトーヨーカドー版ネットスーパー」として導入。その事業価値について、10X代表の矢本真丈はさまざまなメディアで語っていますが、ともに開発を行ってきたCTO石川洋資はどう感じているのでしょうか?今回のインタビューで紐解きました。
CTOの@_ishkawa。いつもデスクが綺麗です。
プロフィール
石川 洋資 | @_ishkawa
Co-Founder, 取締役CTO
大学にて経営工学を専攻。在学中にスタートアップの創業メンバーとなり、iOSアプリの開発に取り組む。大学卒業後は面白法人カヤック、LINE株式会社、株式会社メルカリで新規アプリの開発に携わる。その後、メルカリで同僚だった矢本と株式会社10Xを創業し、CTOとしてプロダクト開発全般を担当する。
ターゲットは、同じ業種だけど“まったく異なる”2つの事業者
ーさっそくですが、Stailerはどんなパートナーをターゲットにしているんでしょうか?
Stailerのパートナーは、以下となります。
* ネットスーパーをすでに持っているスーパー事業者
* ネットスーパーをまだ持っていないスーパー事業者
要するに「スーパー事業を行うすべての方々」がパートナーと言えますが、ネットスーパーを持っている・持っていないでは、サービスに求められる内容はまったく異なります。そのため、僕らのなかでは同じスーパー事業者であれど、この2つは違うターゲットとして認識しているんです。
10X Culture Deckより抜粋
ーでは、それぞれにどういった価値を届けようとしているんですか?
まずは「ネットスーパーをすでに持っているスーパー事業者」。すでに持っているということは、Webサイトがある。しかし、あくまでもWeb版であり、そこからアプリをつくったり、運営したりするのが難しかった。ネットスーパーは、お客さまが週1〜2回は使うものなので、ユーザー体験も大事です。そこをまるっと10Xが開発・運営するので、コストを掛けずに済み、ユーザー体験も向上するところが魅力となっています。
そして「ネットスーパーを持っていないスーパー事業者」が感じる魅力について。そもそもネットスーパーには、かなりの開発コストがかかります。サイトをつくるだけでなく、注文された商品をピックしたり、配送管理したり…裏側の仕組みがとても複雑なのです。そうなると、ネットスーパーを持つことができるのは、ある程度の開発投資ができるスーパー事業者に限らてしまいます。一方で、Stailerは初期の開発コストをほとんどかけることなく、ネットスーパーを立ち上げられるサービス。立ち上げコストを抑えて、ネットスーパー事業を開始し実効性の検証ができる点を、魅力に感じられていますね。
「開発不要」の裏側で確立された2つのモチベーション維持
ー「ネットスーパーをすでに持っているスーパー事業者」が「開発不要でアプリをリリースできる」とは、どういう仕組みになっているんですか?
「ネットスーパーをすでに持っているスーパー事業者」に対してStailerが提供しているのは、既存のWeb版のネットスーパーと連携するアプリです。お客さまはアプリ上のUIを見ながら買い物ができ、その裏側では10Xが提供先のネットスーパーのWebサイトを自動操作し、商品を購入できるという仕組みになっています。
ーネットスーパーアプリの開発を、まるっと10Xが引き受けているイメージ?
そうです。Stailerは、プロダクトの仕様策定や開発を10X、実際の運営をスーパー事業者の方々が行います。なので、システムも売り切りではなく、レベニューシェアのスタイル。この関係性があるおかげで、僕らはStailerをお客さまにたくさん利用してもらえるように開発し、スーパー事業者の方々はお店の売上をあげるためにどんどんStailerを活用する。ともにモチベーションを保てる状態になっているんです。
ーお互いのモチベーション維持ができているから「開発不要」が成り立っているんですね。しかし、スーパー事業者の方々に対しては、売上を分け合うレベニューシェアより売り切りのほうがコスト感もはっきりしてやりやすい印象もありますが?
スーパー事業者さんと話し合うなかで、彼らは既存のネットスーパーに対して「ここを直したい」と思うことはあれど、これまで外部ベンダーに委託していた開発自体が売り切りだったことから、ひとつの改善をするにしても社内外の調整に時間がかかり、なかなか実現しなかった過去がありました。また小さな改修であっても、価値以上にコストがかかってしまい本質的な施策がタイムリーに実行できないケースも多いです。ならば売り切りではなく、ユーザーの使い勝手を良くする開発をスピード感早く行うことができ、1つ1つの機能についてはいちいちコストを考えなくてもいいレベニューシェアがいいという判断になったのです。
ースーパー自体、商品の入れ替わりも激しく、売り場の配置換えも頻繁に行われています。そうすると、レベニューシェアのほうが受け入れられやすいやり方とも言えますね。
タベリーからStailerへたどり着くまでの経緯
ーStailerが今のスタイルにたどり着くまでに、どういった道のりがあったのでしょうか?
もともと10Xでは、2017年の創業時から献立アプリ「タベリー」を運営していました。このアプリは一週間分の献立を自動で生成し献立を考える手間を減らし、さらに「オンライン注文機能」から献立に必要な食材をネットスーパーで注文できるというものです。
実は、昨年夏にタベリーのオンライン注文機能をリリースしたとき、イトーヨーカドーさんから「タベリーのイトーヨーカドー版をつくれないか?」という話をいただいていました。そこからStailerの構想を考えたので、今思えばすべての始まりはここにあったように思います。
※詳しくは10X CEO矢本のブログ「タベリーからStailerへ」をご覧ください。
10X Culture Deckより抜粋
ーということは、Stailerはタベリーのオンライン注文機能を引き継いでいる?
ベースにしていますが、すべてを引き継いでいるわけではありません。タベリーのオンライン注文機能は、献立を起点に「何を買うのか」をサポートするもの。しかし、Stailerは「スーパーのアプリ」です。そうすると、商品が起点になり、献立は購入をサポートする立ち位置となります。そこで、Stailerでは商品を選ぶ際に「こんな献立ができる」と提案しています。
Webサイトとの連携、お客さまのフィードバック…Stailerリリース前後にぶつかった壁
ー現在、Stailerはイトーヨーカドーに導入いただいています。リリースまでの開発過程で印象に残っていることは?
Stailerは「ネットスーパーをすでに持っているスーパー事業者」向けにはWebサイトを自動操作できる「サイトコントローラー」を導入しています。これによって、イトーヨーカドー側が運営するWebサイト上のネットスーパーと、我々が運営するアプリを連携させていました。でも、サイトの構造が変わるとアプリ側が動かなくなったり、うまく連携できないことがありましたね。
また、イトーヨーカドーさんのような大手企業と一緒に取り組むということは、パートナー企業が求めるセキュリティレベルをクリアする必要があります。そのため、どの情報なら10X側で持っていてOKで、逆に何だったらNGなのか…そういった設計上の認識合わせや調整は、けっこう時間をかけた気がします。
ーリリース後はどうでしたか?
アプリを使用したお客さまからのフィードバック対応に追われていました。イトーヨーカドーは、20年ほどネットスーパーを運営しています。そして、サービスを使い続けている既存のお客さまも多数いる。いままでWebサイトを使っていた方がはじめてアプリを利用した際には、使い勝手も違うのでたくさんの意見をいただき、その中には僕らが考慮しきれていなかったポイントも多数ありました。そのため、最初の1〜2ヶ月は、お客さまの声を一つひとつ聞き、問題を解決していきました。
たとえば、イトーヨーカドーネットスーパーアプリをリリースした当初は、お気に入りした商品のインポート機能がありませんでした。そのせいで、昔からWebサイトを使ってるお客さまがアプリからお気に入りした商品を探せないという不満がありました。直ぐにインポート機能をリリースしたので、今は色々なお客さまが使えるようになっています。
ー逆に、アプリだからこそ実現できたことはあったんでしょうか?
1つは、ログインのセッションを維持できること。おかげで、思い立ったときにいつでもアプリを立ち上げ、買い物できる。これは、アプリならではの体験だと思っています。
もう1つは、アプリ内の売り場構成が最適化されていること。スーパーは商品点数が非常に多いので、Webサイトで商品を探すときにはたくさんのページ遷移が必要だったりします。その点で、一覧性高く商品を探す・カートに追加がサクサクできるのは、アプリならではですね。
「Stailerが広がる=全国的にネットスーパー文化を広められる」
ー今は、ネットスーパーを既に持っている事業者さんに向けて開発を進めていますが、今後はもう1つのターゲットである「ネットスーパーを持っていない事業者さん」に向けても開発を進めていきますよね?そのなかで、Stailerが実現したいことは?
おっしゃるとおり、今まさに「ネットスーパーを持っていない事業者さん」に必要なシステムを提供する案件も水面下で進んでいます。Stailerは初期費用はほぼなしでサービスインできるようにしているので、小さな規模のスーパー事業者さんでも導入可能。「Stailerが広がる=全国的にネットスーパー文化を広められる」と考えています。
例えば、ネットスーパーを持っていないスーパー事業者さんには、必要なシステムをひと通り開発しつつ、同時に店頭の在庫情報をシステム上で反映する仕組みや、注文商品を店頭スタッフが一つひとつ売り場からお客さまへ渡せる仕組みなど、裏側で整えるべきところが多い。それを今、開発しているところですね。
ー裏側の仕組みを開発するには、もっと仲間が必要そうですね。
はい!現在、10Xではソフトウェアエンジニアを募集中です。興味のある方は、ぜひ一度お話できれば嬉しいです。お待ちしています。
エンジニアチームの様子。週1のオフィスデーは会話も活発です。
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