Stailerのビジネスモデルってどうなってるの?10Xのファイナンス担当に聞いてみた

2023/10/18

10Xは「Stailer (ステイラー)」という小売チェーン向けのプラットフォームを開発・運営しています。

そんなStailerですが、「どんなビジネスモデルになってるの?」「小売って粗利率が高くないって聞くけど、ぶっちゃけ稼げるの?」という質問をよくいただきます。そこで今日はCFOの山田さんと、コーポレートストラテジー&ファイナンス部の前原さんに「Stailerのビジネスモデル」をテーマに、素朴な疑問をぶつけてみました!

「Stailerって、そもそもどんなサービス?」については、こちらの記事でCTO石川さんが世界一わかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください

山田 聡

@syamada0

取締役CFO

三菱商事株式会社でロシア・カザフスタン向けの自動車販売事業・現地販売会社のM&A及びPMIを経験。その後、米系PEファンドであるCarlyle Groupに参画し、おやつカンパニーやオリオンビールの投資・PMIを実行。Wharton MBA(2017年)。10X以外にもVoreas北海道を始めとするスポーツチームの経営支援に関わる。

前原 宏紀

@sport0505

Corporate Strategy&Finance部部長

日本銀行にて国内の金融機関考査や国際金融規制の立案に従事。2021年5月にUniversity of Pennsylvania Wharton校にて経営学修士(MBA)を取得後、2021年12月に10Xに参画。趣味はバスケットボール。

Stailerのビジネスモデル徹底解説!3階建ての料金モデルって?

ーーよろしくお願いします!早速ですが、Stailerのビジネスモデルってどうなっているんですか?実際、10Xはどうやって収入を得ているんですか?

山田:10Xは、スーパーや、ドラッグストアといった大手小売企業に対して、その小売企業がネットスーパー・ネットドラックストアを運営するために必要なシステム・サービスをまるっと提供しています。なので、ビジネスモデルとしては、パートナーである小売企業様から10Xに費用をお支払いいただいている形になります。

ーーつまり、ネットスーパーでお買い物をするお客さんが、直接10Xにお金を払っているわけではない?

山田:お客様が日々のお買い物にネットスーパーを利用し、代金を小売企業に支払いますよね。小売企業は、その売上の一部から、10Xにシステム利用料として支払っています。

10Xは、お客様が使うネットスーパーのアプリも、お客様に商品を届けるために小売企業のスタッフが使うアプリも、必要なシステムを一気通貫で提供しています。お客様が買い物をする→小売企業の売上になる→10Xにお金を払う、という形。これは「BtoBtoC」と呼ばれるビジネスモデルです。

ーーなるほど。それでは、小売企業の方がStailerを使ってネットスーパーやネットドラッグストアをやりたい!と思った場合、いつ・どれくらいお金が必要になるんですか?

前原:実は、3階建てで費用をいただく形になっています。

ーー…3階建て…?

前原:3回のタイミングで費用が発生するということです。分かりやすく説明しますね。

まず、ネットスーパー開始前に「初期セットアップ費用」をいただきます。システムの構築やサービス設計など開始までに様々な準備が必要で、そのためにいただく費用です。ただしStailerのプラットフォームの型はすでに完成しているので、ゼロからシステム構築の費用をいただくのではなく、あくまでもプラットフォームを基準として導入する際にかかる差分としての最低限の費用をいただいています。
次に、ネットスーパーの開始後にシステムを運営するために必要な「月額運用費」をいただきます。具体的にはシステムの保守・運用や改修に充てていますが、こちらも最低限をいただきます。
3つ目がメインとなる「売上連動費」で、Stailerを通じた売上に連動して費用をいただいています。一部は取引量に応じて増えるサーバー代などの変動費にあたりますが、主には小売企業様の事業成長に繋げるためのシステムの開発費用や事業支援に充てています。

Stailerの料金体系


ーーネットスーパーの売上が上がるほど、10Xに支払ってもらうお金が大きくなる、ということですか?

山田:その通りです。ネットスーパーをやるかどうかって、各企業にとっては大きな投資になりますし、シビアな経営上の意思決定が必要になるんですよね。でも、この売上連動費という設定にすることで、「正直、ネットスーパーでどれくらいの売上が作れるか分からない」という状態でも「関係なく毎月お金を一定いただきます!」ということではなく、「まずは小さくはじめてみて、成長したら10Xにもシェアしてくださいね」という形にすることができます。小売企業は、費用(つまりリスク)を一定抑えてネットスーパーをスタートできるんですね。

ネットスーパーは、最初は小さく始め、少しずつ成長していくことが前提のビジネスなので、こうした従量課金形態と相性が良いと考え、このプライシングモデルを設定しました。

また、我々は、単純にスーパーやドラッグストアをオンライン化すればそれでゴール、とは思っていないんです。


ーー「オンライン化がゴールではない」とはどういうことでしょうか?

前原:10Xが目指したいのは、「Stailerを通じて小売企業様のネットスーパー事業が持続可能な形で成長し続けること」です。

小売企業がネットスーパーを成長させていくために、10Xもしっかり小売事業者を支援し、その成長にコミットするぞ!という前提があります。「売上連動費」を設けた理由は、各社がネットスーパーを導入しても実際にお客様に使われず売上が上がらなければ、10Xにとっても長期的には意味がない、という状態を作るためです。我々の目指す目標とそのゴールに向けた姿勢を伝えるためにも、「一緒にリスクをとり、成長したらシェアする」という料金体系にしており、このビジネスモデルはStailerの提供開始当初から変わっていません。

10XはStailerを通じて小売企業の事業を支援し続ける。小売企業のネットスーパー事業が成長していく。お客様は進化するネットスーパーを通して便利な買い物体験を享受する。10Xの成長と、小売企業のネットスーパー事業の成長と、その先にいるお客様の買い物体験の向上がwin-win-winでアライン(一致)している状態を作るために、現在の3階建ての料金モデルでお金をいただいています。

Stailerで無駄な開発をしないことが、ネットスーパーで「安い価格で、便利に買い物すること」に繋がる


ーー小売企業側から追加機能を求められた場合、どうしているんでしょうか?

山田:Stailerを提供する上での基本的な考えは「私たちはプラットフォーマーである」ということです。ひとつひとつのリクエストにお答えして、個別開発を請け負う、ということではなく、Stailerというプラットフォーム自体が最大公約数を実現していく方が、結果的に誰にとっても投資効率がいいんですよね。もちろん、Stailerの機能を決める際には、小売の現場の方が最もお客様やスタッフニーズの解像度が高いので、その声を尊重して決めていきます。

小売業界は、もともとの粗利率が高くはないんです。その上で、ネットスーパー事業をやろうと思うと、デリバリーも行う=配送やピッキングのコストもかかる。そうした中で利益率を高めるのは、実はとても難しいことなんです。

なので、Stailerとしても、パートナーである小売企業に対して「なんでも開発します!」という姿勢ではなくて、無駄な機能は無くし、全体の開発コストを最適化していく、という視点をすごく大切にしています。それが、まわりまわって、ネットスーパーを利用するお客様の「安い価格で便利に買い物すること」という体験に繋がるからです。粗利率が高くない業界だからこそ、全体のコスト削減・最適化、というのは徹底して考えています。

余談ですが、日本でこれまでネットスーパーでの黒字化が難しく、なかなか根付かなかった背景には「こうした投資コストとそこから得られる事業成果の最適化の視点を持ちながら、事業開発・システム開発を進められた会社がいなかったからなのではないか?」とも考えています。


ネットスーパー事業の難しさを因数分解すると…?


前原:こちらの図を見ていただければ分かりやすいのですが、食品小売に対して顧客が求めるものってすごく多いんですよね。当たり前ですが、価格は見られますよね。あとは、いつでも商品が揃っていることも大事。さらに商品が新鮮なことも大事。いろんな要素が当たり前として求められていますが、そのどれもを同時に実現すること自体が実はすごく難しい。そんな中で一消費者から見ると「絶対ここで買い物しなきゃ!」という性質も、他のビジネスに比べると薄く、どこで食料品や生活用品を買ってもそこまで大きな違いはない、という大変シビアな世界です。

そしてこういった食品小売の必須要素を全てネットで実現しようとすると、とても大変なんです。低い価格・豊富な品揃えを追い求めつつ全体の採算を考えるとかなりの難易度になり、「ネットスーパーは通常のECビジネスと同じ」と捉えると全く事業理解が及びません。お客様理解や現場のオペレーション理解など……細かく小売業界に入り込んで専門化しつつ全体のコスト最適化も考えないと最終的な商品価格が高くなってしまう。

こうした全体感を突き詰めて小売企業の力になるべく、システム開発・マーケティング・データ整備・オペレーションコンサルティング…など、さまざま専門家が揃っているのは10Xの大きな強みだと思います。


ーー小売企業がネットスーパーを始めるにあたって、10Xに払う以外のコストってあるんでしょうか?

山田:小売企業サイドにはネットスーパー開設のために様々な費用がかかっています。具体的には、配送スタッフの人件費や配送車両、ガソリン代、ネットスーパー用の棚や、保冷剤や袋などの準備にかかる費用です。

10Xに払う費用と合わせると、色々なコストが発生しており、10Xはその全体を意識し、最適化を支援する必要があるなと感じています。

しかし、ネットスーパーの強みとして「まずは1店舗からテスト開設しながら、黒字化ラインが見えたところで改めて判断し、他の店舗にも展開しよう」というような店舗単位での投資の進め方ができます。そうなると、最初の投資は数百〜数千万円で収まります。小売事業者が新しい店舗をオープンさせたり、すでにある店舗をリニューアル開店するには、億単位の投資が必要なので、その点で比べると、ネットスーパーは低い金額でまず実験をできる、というメリットはありそうです。

前原:小売企業様とご一緒する際には、10X側でその小売企業様のネットスーパー事業の収支も必ず考えるようにしています。小売事業と言っても商圏が首都圏なのか地方なのか、配送範囲が広域なのか狭域なのか、強みとしている商品特性は何なのかなど、それぞれの企業様で特色は異なります。そうした特色を踏まえて小売企業側の事業採算が成り立つかという点は常に見ています。プロジェクトが立ち上がる度に、事業開発、販促、オペレーション、ファイナンスのメンバーを交えて、事業として収支を作っていけるのか、お互いに持っている視点で精査しています。


Stailer導入前と導入後のネットスーパー運営費用を比較した図

ーー今後、Stailer以外での稼ぎ方は検討しているのでしょうか?

山田:今の所、10XはStailerで収益を作っていますが、今後は、付加機能の提供・マーケティングやクリエイティブによる販促支援・オペレーション設計、バックヤード設計等のコンサル支援、といった付加価値的な別のサービスラインアップの提供も検討しています。これらの機能は、Stailerのベーシックなパッケージにも一部含んでいるのですが、より専門的な内容まで踏み込んで実施する場合は、別プラスで費用をいただいています。

今後の人口減少に伴い、ネットスーパーはどうなる?Stailerはどう成長する?

ーー今後、人口減少に伴い、小売業界自体も厳しくなる可能性があります。どう捉えていますか?

山田:食品小売市場全体は、インフラなので、人口動態と連動しますし、縮小傾向だと思います。しかし、ネットスーパーは生活のインフラとして拡大していくと考えています。過疎地域ではスーパーやコンビニは商圏の縮小・売上減少によりコストカバーが難しくなり出店維持できなくなるリスクを抱えています。さらに、高齢者の免許返納もあり、今後ますます買い物困難者が増えるという流れもあります。そうした環境下にあるので、今後、日本でヘルスケア市場が自然と伸びるのと同様に、食品ECに関しては完全なグロース産業と捉えています。

食品ECをやろうと思った時に、一番強いのはスーパーです。鮮度を求められる生鮮品をすでにリアルの店舗で扱っており、それを在庫として活用できます。更にエンドユーザーからの小売ブランドとしての信頼も獲得している。何より、スーパーでのお買い物は日々の生活の中で習慣化しています。

ーーStailerの黒字化には何年かかる見込みでしょうか?

山田:10Xがご一緒しているパートナー単位では、黒字化しているプロジェクトはすでにあります。

ネットスーパーという市場自体に対しては、成長を見越して先行投資する段階だと捉えています。10Xの足元の調達環境など踏まえると、この先1〜2年で、先行投資は除いた形で、ベースのキャッシュフローの黒字化が目指せるような水準にコントロールしています。

一方で、10Xとしては、さらに大きな市場を目指すためには基本は攻めていきたい、と考えています。理想を例えるなら「いつでもブレーキをかけられる状態で120kmでコーナーに突入している感じ」でしょうか。そのため全体としてのキャッシュフローコントロールはかなり厳しくやっています。

ーーStailerが稼ぎ続ける(=持続可能なサービスである)ために必要なことはなんでしょうか?

前原:パートナーとなる小売企業様がちゃんと儲かるか?という視点を常に持ちながらネットスーパーを作り続けられるか、だと思います。平たくいうと、小売企業様も消費者も10Xも皆がハッピーになれるかどうか、それが10Xの継続的な成長にも繋がると考えています。

ーーありがとうございました!
Stailerのことをさらに知りたい方は、下記の資料もご覧ください。


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