Ubieと10Xが語る「社会インフラ事業」を支えるコーポレートIT

2022/11/24

「急成長スタートアップの裏側を支えるコーポレート部門大集合」ということで開催されたオンラインイベント「黒子のコーポレート大激論 Days」。
当日は、普段はなかなか表に出てこないコーポレート部門のメンバーが集まり、キャリアや課題を語り合いました。

第1日目のセッション3では「次世代の社会インフラ事業を支え、加速するコーポレートITエンジニア」をテーマに、Ubieの盛田崇弘氏、10Xの佐藤亮太氏が登場。モデレーターはFlatt Securityの豊田恵二郎氏。社会インフラ事業を目指す両社を「働きやすさ」から支えるとはどういう仕事なのかを明かしました。

スピーカー 盛田崇弘

@tamosan_01

Ubie Corporate Engineer

前職は金融SIerにて、24時間365日稼働するシステムの運用保守業務に従事。その傍ら業務効率と品質を向上するため、コミュニケーションサービスやCICD環境など社内ITの整備を推進。2021年9月よりUbie株式会社のコーポレートエンジニアとして、社内メンバーがSaaSから業務デバイスなどの社内ITを安全に利用できるようにしつつ、生産性を高めるための施策を推進中。

スピーカー 佐藤亮太

@ryotasato20

10X CorporateIT マネージャー

NTTコミュニケーションズで基幹システムの開発や社内コラボレーションツールの導入を経験後、FOLIO・SBIグループにて社内情報システムの導入や運用に携わる。2022年4月10Xに入社。趣味は音楽鑑賞。

モデレーター 豊田恵二郎

@toyojuni

Flatt Security 執行役員

2017年に株式会社Flatt Securityを共同創業。 創業前はUIデザイナーとして事業会社勤務、フリーランスでの活動を行い複数のWebアプリケーション開発に携わる。その経験を活かしFlatt Securityでは経営陣として広報やマーケティングを含むDeveloper Relations(DevRel)を管掌する。

社内サービス導入、MDM、セキュリティトレーニング…etc


豊田:モデレーターを務めます、Flatt Securityの豊田です。弊社では各社のプロダクトセキュリティをサポートさせていただいていますが、コーポレートIT全般に詳しいわけではありません。だからこそ、今日はいろいろ勉強させてもらえればと思っています。

さっそくですが、1つ目のテーマである「スタートアップとしてのIT基盤整備」についてです。Ubieも10Xも「社会インフラ」となる事業を推進しています。そのなかで、コーポレートエンジニアはどんな業務を担当しているのかを聞きたいです。まずは盛田さんから!

盛田:Ubieのミッションは「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」です。と言いますのも、「病状を早期発見し、適切な治療へ案内すること」は非常に難しい問題です。医療従事者のなかにも「早期発見さえできれば、救えた命はたくさんある」と感じている人は多い。そんな問題を解決するため、Ubieでは「WEBでの医療情報提供」「医療従事者の業務効率化サポート」の2つの事業を立ち上げています。いずれも、病状の早期発見と適切な医療に結びつけることを目的にしたものです。このサービスを早く届けたい思いで先日、シリーズCでの資金調達も完了しました。

豊田:62.6億円の調達リリースには驚きました!そんな盛田さんは、Ubieの事業を加速させるためにどんなことを?
Ubie、シリーズC総額62.6億円で資金調達を完了

盛田:私は前職でシステム運用保守業務をするかたわら、社内IT整備をしていました。私が入社したころのUbieでは、セキュリティ性や安全性をもっと高めていこうとしているところでした。なぜなら、Ubieは医療やその患者に関わる機微情報がどんどん増え、事業拡大とともに情報漏えいリスクも高まることがわかっていたから。入社後はコーポレートエンジニアとしてGoogleのワークスペースやSlackといった社内サービスを導入。Slackではエンタープライズプランに切り替えたり、MDMを強化するなどしていましたね。

豊田:10Xはどうですか?

佐藤:10Xでは、スーパーのネットアプリを開発不要で立ち上げられる「 Stailer」を開発しています。そして、 Stailerを通じてすべての人の買い物体験を10xさせることを目指しているんです。いわゆるBtoBtoC向けサービスなので、お客さま向けアプリだけでなく、お客様の各店舗で使われる商品ピックアップや配送を管理できるアプリを開発。さらに、お客様の方々とネットスーパーを拡大していくためのグロース支援もしています。

豊田:そのなかで、佐藤さんはどんな領域を担当してきたんですか?

佐藤:まずはMDMやGoogle Workspaceの機能を使って、端末セキュリティ強化の仕組みを作りました。毎月社員が増えるので入社時セキュリティ研修の強化も行いました。さらに、10XのBizDevメンバーは出張も多いので「新幹線でPCを開くときは画面が見えないように注意」「業務都合でお酒を飲む時には原則PCを持参しないこと」といった外出が多いメンバー向けのトレーニングプログラムも作成しましたね。

「社員増加を見越した仕組みづくり」はどうやって説得した?

豊田:Ubieでも10Xでも、社員数の増加を見越した動き方をしている印象が強いです。でも「まだ社員数が多いわけじゃない段階」から仕組みづくりをしたり、SaaSの高額プランを契約しようとしたりすると、経営層や他チームのメンバーへ説明するために費用対効果を定量化する必要がありますよね。「早すぎる」という意見を持つ人を説得することにもなりそうですが…?

盛田:Ubieの場合、共同創業者の一人がエンジニア出身ということもあり、情報漏えいの勘所やシステム導入に対する理解がありました。何より、事業拡大とともに機微情報の漏洩にリスクがあると理解してくれたメンバーも多かった。おかげで「大変だけどやろう」と、システム導入を推進できたんです。

豊田さんが話したとおり、考え方によっては200人以下の組織規模で社内システムを切り替えるなどの対応は「早すぎる」と感じる人もいらっしゃるかもしれません。ですが、300〜400人規模になってから導入するほうが、周囲への理解を得るなどで逆に時間がかかってしまうんですよね。その点、Ubieでは120人のときに社内システム切り替えを決断できたので、結果的には2週間ほどで導入を完了できました。

豊田:エンジニア出身者が経営にいると、危機感や必要性の共通認識が持ちやすくていいですね。佐藤さんは?

佐藤:10Xは皆様が日常的に使うスーパーマーケットやドラッグストアがお客様になります。お客様はいずれも大企業なので、我々に求めるセキュリティレベルは高いです。そういった背景もあり、10Xの経営陣も社内ITやセキュリティへの投資は積極的に行う姿勢がありました。また、10Xでは中長期計画があり、2年後にどれくらい社員が増えるのかを予想しています。私の場合は、中長期計画をもとに「これくらい人が増えるなら、社内システムはこんな感じで進めたいです」と話すようにしていました。

盛田さんの話すとおり、社員が少なければ少ないほど社内システム導入の障壁も少ないと私も思っています。なぜなら、システムは導入するだけでは何も起こりません。導入し、運用しながらトラブルシューティングをしていかないと定着しないんです。そう考えると、社員数が少ないうちに導入するほうがスピーディーに進められます。

豊田:社員の増加を見越すと、早めに機能が豊富なプランに乗り換えておかないと逆にコストがかさむということですよね。

さらに聞きたいのは「社内ITをもっとこうしたい」「ここができていない」と感じるポイントです。何かありますか?

盛田:IDPとMDMはまだまだ強化できるところがあると思っています。社内セキュリティだと一定水準を達成できるものの、モバイルデバイスの管理は発展途上。社員が意識しなくても安全なIT環境になっているように、運用していきたいです。

佐藤:やりたいのは、Terraformを使ったInfrastructure as Codeです。コーポレートエンジニアリングでは、GUIにて設定変更することが多く、変更の履歴管理などをあとで確認するときに手間がかかったりします。そのために、パブリッククラウドなどでよく使われているTerraform等を活用したIaCを行うことで変更の履歴を確認しやすい環境を作りたいと思っています。

豊田:Terraformでの管理ができるのは、プロダクト開発に関わっているエンジニアがメインだと個人的には感じています。コーポレートで行う事例は、世の中的にはまだ少ない気がしますが?

盛田:私の場合はTerraformを触ったことがないままUbieへ入社し、キャッチアップしながら現在に至ります。入社してから覚えることも多いので、もしかすると「郷に入っては郷に従え」的な考えがわかる人はコーポレートエンジニアの適性があると言っていいかもしれませんね。

コーポレートエンジニアの活躍に必要な「組織との一体感」


豊田:次のテーマは「組織設計」です。多くのスタートアップでは、プロダクト開発とコーポレートが分かれているイメージですが、Ubieや10Xのコーポレートエンジニアはどんなチーム体制で働いていますか?

佐藤:私は今、コーポレートオペレーションズ部に所属しています。そこには、私のようなコーポレートエンジニアだけでなく、労務や総務といったメンバーも集約されているんです。おかげで、SaaSや端末管理にとどまることなく、労務や総務メンバーの力を借りながら、従業員体験向上やサポートの仕組みを作る動きができています。

豊田:バックグラウンドがさまざまなメンバーがいると、多面的にカバーできる仕組みができそうですよね。盛田さんは?

盛田:佐藤さんと同じく、Ubieもコーポレート部門が切り出されたような組織体制です。そして、総務や労務などの面々と同じチームにコーポレートエンジニアも所属しています。社員の問い合わせ対応をしているメンバーとタッグを組み、システムで解決していけるのは非常にいいですね。

ただ、Ubieではプロダクト開発とコーポレート間での関わり方を設計中です。今まではプロダクト開発の中にコーポレート部門があり、開発現場のメンバーと連動しながら日々の対応をしていました。部門が分かれてからも、開発現場にいるメンバーの“かゆいところに手が届く”ような対応ができるといったさじ加減を模索しているんです。

豊田:いま盛田さんが少し言及してくださいましたが、コーポレート部門という立場から事業サイドとどう関わりながらインパクトを生んでいるのかが気になります。そのあたりはいかがでしょうか?

佐藤:主なやりとりとしてはヘルプデスク業務での関わりのほか新しいSaaS利用の相談やお客様からのセキュリティチェックシート依頼に対して会社のセキュリティを説明するといったことがあげられます。またお客様にてMDMを使って弊社のアプリ管理をする際のサポートを行うこともあります。

盛田:Ubieでも10Xと似たところがあります。「こういうSaaSを使ってみたい」「こんな機能があると便利」のようなSlackでのつぶやきを見かけたら、GASを組んでみるなど、問い合わせベースに行動することがありますね。

豊田:そういった環境下で、コーポレートエンジニアが活躍できる場を作るには、何を意識するといいのでしょうか?


佐藤:私自身は、コーポレートの皆と一緒に動くやり方が好きです。コーポレートエンジニアは、プロダクト開発のメンバーが気持ちよく働く場作りのために、経理や総務といったバックグラウンドを持つメンバーの協力が不可欠。スキルは違えど志は同じメンバーと一緒に仕事をすることで、日々のフィードバックももらえます。これが、モチベーションにもつながっているんです。なので、コーポレートエンジニアが活躍する場として「組織との一体感」は重視したほうがいいと思います。

盛田:おっしゃるとおりですね。コーポレートエンジニアとして「働く上で“気持ちいい”と感じるところは何か?」を考え抜くこと事業を促進し、最終的には人々を適切な医療へ案内するところへ行き着きます。そういう意味でも、同じ志を持つことは大事です。ちなみに、Ubieではカルチャーフィットをとても重視しています。すごく優秀な人でもUbieとは合わない方はいらっしゃるので、優秀かつUbieにマッチする方との面談や面接を重ね、フィーリングを合わせていくことに重きを置いています。

「いい状態=何も起こらない」だからこそ、お礼を言われると嬉しい!

豊田:改めて聞くのですが、盛田さんと佐藤さんはなぜ今の会社へ入ろうと思ったんですか?

盛田:実は私は転職を考えていたわけではなかったのですが、前職の業務の中で、社内の生産性を上げる=企業の価値推進に効果的であるということは実感していました。そんななか、前職の同期から「業務効率化を推進する企業で、社内の生産性を上げる仕事をするのは面白いよ」と言われてUbieの話を聞きに行ったんです。転職する気持ちが強かったわけではないのですが、面接を重ねていくうちに、Ubieに所属するメンバーたちに魅力を感じて「ここで働いたらどんなに面白いだろう」と思い、入社を決めました。

豊田:面接中にアトラクトされたんですか?

盛田:直接的に「Ubieは素晴らしい会社だ」と言われたわけじゃないのですが、面接担当者の話す内容の節々で世の中にもたらされる価値の大きさがにじみ出ていました。「我々はこういうことがしたいんだ」と自信を持って話していましたし、そのためのロードマップも頭の中で描いていました。ここなら社内業務の効率化を事業価値向上に直結できると体感しました。

豊田:面接官の熱量は大事なポイントですね。佐藤さんは?

佐藤:弊社のPodcastでも話したんですが、実は昨年末くらいまで10X自体を知らなくて…(笑)。転職を考えていたときに、友人から「10Xという会社があるよ」と教えてもらい、Podcastなど聴いてみておもしろそうだと思ったのでカジュアル面談を申し込みました。印象的だったのはトライアルという選考プロセスです。これは事前に「インパクトあるイシュー」を挙げ、1日〜数日かけて課題に取り組むというものです。そこでBizDevの人たちと話していたら、エンタープライズ企業と一緒に事業を拡大させていくためにも、自社のセキュリティをちゃんとやりたい気持ちが強いとわかりました。また、社長である矢本さんと話していたら、会話のところどころで「次世代のインフラを作りたい」という言葉が飛び出していました。私自身のファーストキャリアがNTTグループということもあり、インフラへの思い入れがあります。何より、10Xメンバーの熱量がとても高くて…オファーをいただいた瞬間に入社しますと即答しました。

豊田:10Xを知らなかったとは、ちょっと驚きですね(笑)。そういえば、最近見かけた、10Xに入社した方のブログでも、トライアル入社で寄せ書きをもらったというエピソードがありました。そういった行動は、気持ちがこもっているからできることですよね。盛田さんと佐藤さんがコーポレートエンジニアとしてやりがいを感じる場面は?

盛田:定番かもしれませんが、やはりメンバーから「あの機能、役に立ったよ!」と言われたときにやりがいを実感します。セキュリティ対策やSlackのワークスペースを分けておくといった中長期的なものはすぐに反応はないものの、組織の文化情勢に役立っている場面が出てくると「目立たないけどやってよかった」と思えますね。


豊田:特にセキュリティは「いい状態=何も起こらない」なのでおっしゃるとおりですね。だからこそ、小さいけれど褒めてもらえたりいい反応があったりすると嬉しいです。佐藤さんは?

佐藤:私もコーポレートに関連した仕事が長いので、その気持ちはとてもわかります(笑)。できて当たり前、できなければ問い合わせがくるので、モチベーション維持が大変ですよね。その点、10XメンバーはSNSなどで「うちのコーポレートは強い」と発信してくれていてうれしいです!少し照れくさい気持ちもありますが、私は褒められて伸びるタイプなのでありがたいです。

豊田:僕も、もっとお礼を言うように心がけたいと思います(笑)。本日は、価値あるお話を聞くことができました。盛田さん、佐藤さん、ありがとうございました!

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