組織の未来を探索したい。10Xが「ミドルマネジメント支援」で挑む“100人の壁”

2023/11/13

10Xのメンバーは1年間で約2倍に増え、現在社員数は120名超。組織拡大の難局とされる“100人の壁”を超え、事業成長に伴って組織も刻々と変化しています。

そんな10Xでは、2023年9月「ミドルマネジメントポリシー」を策定し、「10Xらしいマネージャー像」を言語化しました。
10Xで今「ミドルマネジメント支援」に取り組む理由とは?10Xらしいマネージャー像、組織とは、一体どのようなものなのでしょうか。

「ミドルマネジメント支援」を推進したHR本部長のTakeshiさん、現場でマネジメントを担当する4名のメンバーにお話を伺いました。

吉田 毅(Takeshi)

HR本部長

流通業・商社を経て03年にヤフー株式会社に入社。法人営業、営業企画などを担当したのち、12年から人事部で組織開発推進に携わる。15年6月にSyn.ホールディングス株式会社(現 Supershipホールディングス株式会社)に入社、人事部門を管掌。19年6月にDATUM STUDIO株式会社 代表取締役社長に就任、22年6月に退任。同年10月より株式会社10XにHR本部長としてジョイン。

“100人の壁”を超え、「ミドルマネジメント支援」が要に

——今回のマネジメントポリシー策定は、HRで推進している「ミドルマネジメント支援」の一環だと伺いました。あらためて、今ミドルマネジメント層への支援が必要だと考えた理由を教えてください。

Takeshi:結論からお伝えすると、2022年10月に行った「マトリクス組織(※)」への移行が大きく関係しています。

10Xでは俗に言う“100人の壁”を超えるタイミングで、今後のさらなる事業と組織のスケールを見据えた大規模な組織変更を行ったんです。

マトリクス組織:レポートラインが2つ以上ある組織のこと。そのため、メンバーは複数のレポートラインや上長を持つことになる。10Xはパートナーの事業成長に伴走し、その成果を最大化するための「Stailer事業本部」、プラットフォームとして汎用的な資産を構築する「機能本部」、全社の基盤を提供・維持する「コーポレート本部」の3つで構成されている。 参考記事:組織と人事に向き合ったCEOの12ヶ月


この組織変更により、これまで現場の最前線で活動してきたメンバーもマネジメントロールを担うことになりました。つまり、「ミドルマネジメント層」が一気に厚くなったんですね。

「マトリクス組織」というやや特殊な組織体において大切なのは、各チームが十全に機能し、さらにチーム間の横の連携がとれていること。それを実現するためには、経営層とメンバー、そしてパートナー企業をつなぐ「ミドルマネジメント層」がキーパーソンになってくると考えています。

10Xの事業成功、そして組織成長において、ミドルマネジメント支援は非常に重要なポイントになると感じていました。

——ミドルマネジメント支援を行う中でも、「マネジメントポリシー」の策定から始めたのはどうしてですか?

Takeshi:すでに内在する「10Xらしいマネージャー像」を言語化することが、ミドルマネジメント支援の効果を最大化させると考えたからです。世の中を探せば、一般的な「マネジメント論」はたくさんある。しかし、マネジメントは実践こそ重要です。“100人の壁”を超えるタイミングにおいて、そしてネットスーパー、ネットドラッグストアという前例のないプロダクトを扱う10Xにとって、既存のフレームワークは通用しない。すでに10Xのマネージャーの中に存在する価値観から抽出し、組織の独自性を反映させた方が実効性が高まると思いました。

10X Management Policyの全文(本リンクからも直接ご覧いただけます)

「Think10x」が浸透する、10Xらしいマネージャー像

——ポリシーはどのようなプロセスを経て策定したんですか?

Takeshi:2023年3月に全マネージャーを集めた「ミドルマネジメント合宿」を開催しました。合宿のコンテンツの一部としてレゴを用いたワークを実施し、マネージャー全員で「10Xが目指す理想のチームとは」「10Xらしいマネージャー像とは」といった価値観を言葉に落とし込んでいきました。彼らから出たキーワードをHRでストーリーとして編み直し、さらに経営層とも議論を交えながら、最終的に5つのポリシーに紡いでいきました。

ミドルマネジメント合宿の様子


——経営層やマネージャー全員で作り上げていったのですね。

Takeshi:そうですね。実践性が高いものを作るためには、策定のプロセスに参画してもらうのがもっとも大切だと思っていました。全員が腹落ちする内容でなければ、この施策の効果が発揮しづらいからです。

合宿後は全マネージャーとの1on1を通してコンテンツやワーディングに関して意見をもらい、さらにブラッシュアップ。準備を重ね、マネジメント合宿からおよそ半年ほど経ったオフサイトの場で全マネージャーに向けて発表しました。マネージャーたちから「違和感がない」と良い反応がもらえて、安心しましたね。

10Xのマネージャーが日常のコミュニケーションで使っている「生きた言葉」だからこそ、そう言ってもらえたのだと思っています。

——Takeshiさんから見て、「10Xらしい」と感じたポリシーはありますか?

Takeshi:多くのマネージャーが口々に発していたのが、5つ目の「未来を探索する」という文言で。「意図的にチームに余白を創り出す」というセンテンスも、僕のこれまでの人事キャリアの中で想定していなかった着眼点でしたね。

「理想の未来」から考え、「探索的な一歩」を重ねようとする「Think10x」のバリューが、一人ひとりに染み込んでいる。まさに「10Xらしさ」が光るポリシーだと感じました。

「ミドルマネジメントポリシー」を“心の拠りどころ”に

——人事では「ミドルマネジメントポリシー」をどのような場面で活用してほしいですか?

Takeshi:まず、このポリシーは彼らの中に内在する言葉から紡いだものなので、全く新しい概念ではありません。

その前提でお答えすると、マネージャーが日々判断に迷ったりした際に、「あるべき姿」に立ち返る指針——もっと言えば、“心の拠りどころ”にしてもらいたい。そんな思いでこのポリシーを作りました。

また、本ポリシーに基づいて役職者の登用要件やサーベイの項目を設定するなど、フィードバックや人事施策の一貫性が担保されるよう仕組み化しました。

他にも、目標設定など日々の業務プロセスのあらゆる場面でこのポリシーが活用され、フィードバックが行われることで、組織や事業成長にとっても良い循環となることを願っています。

——他にミドルマネジメント支援として行っている施策があれば、教えてください。

Takeshi:人事としてもう一つ注力しようと考えていたのが、「マネージャー同士の横のコミュニケーションの活性化」です。その施策の一環として、月に1回「マネジメントナレッジの共有会」を始めました。

開催のきっかけは、私たち人事がマネジャー一人ひとりと向き合う中でわかった「リアルな課題感や悩み」です。

マトリクス組織への移行や難易度が高い事業特性など、日々非常に高い壁に直面する中で、「他のマネージャーはどう対処しているのか?」「我流のマネジメントで合っているのだろうか?」と不安に感じているマネージャーが多かった。

そこで、マネージャー自身が過去にどう難局を乗り切ったのか、時に失敗談も交えながら、経験やノウハウをシェアしてもらう場を設けたんです。繰り返しになりますが、マネジメントは実践が肝なので、「生きた知恵」として実践に活かせる場づくりを意識していますね。

マネジメントナレッジのNotionデータベースの様子


——10Xがそこまでミドルマネジメント支援に注力するのは、どんな思いがあるのでしょうか?

Takeshi:そもそも、10Xではマネージャーも一つの「役割」として捉えています。それはつまり、どのポジション、レイヤーも、最終的には10Xの事業成功というミッションを担っている、という考えに基づいています。

会社がメンバー一人ひとりに「最適なアサインメント・機会提供」を行うことで、個人の能力が正しく発揮され、目標達成やキャリア開発が実現でき、最終的には10Xの事業成功として結実していく。

この「最適なアサインメント・機会提供」を実行するのがマネジメントの役割だと考えると、マネジメントが正しく機能することこそが、10Xの事業成功には不可欠です。

だから、現場のマネージャーが抱える悩みや課題は、私たち人事や、10Xのすべてのメンバーにとって他人事ではない。そう考えています。

僕自身も、マネジメントのやりがいや難しさはよく理解しているつもりです。僕のところに相談に来てもらうのはウェルカムですし、今回の施策についても忌憚なく意見をもらえたら嬉しいですね。「10Xの事業成功」という同じ目標に向かう仲間として、役割にかかわらず、オーナーシップ・フォロワーシップを持つことが誠実な組織づくり、より良い事業につながっていきますから。

熱量高く、フラットに対話ができるカルチャーが根付いている10Xであれば、それを成し遂げる胆力があると信じています。

「ミドルマネジメントの皆さん、現場は実際どうですか?」マネージャー4人の本音を聞いてみた

ここからは、10Xのさまざまな職種、レイヤーでマネジメントに携わるメンバーの対談をお届けします。日々マネジメントを行う上でどのような課題、悩みを抱えているのでしょうか?そして、今回のミドルマネジメントポリシーに思うことは?お話を伺いました。

赤木 努

Business Development

三菱商事株式会社、海外出向を経て、2020年4月より10Xにジョイン。現在はBizDevメンバーを中心に多数の職種の社員約30名ほどのマネジメントに携わる。マネジメント歴は1年半ほど。

江波 拓郎

Product Manager

サントリーや複数のベンチャー、スタートアップを経て、2022年7月より10Xにジョイン。2023年10月よりプロダクト本部長に就任。PdMやデザイナーをはじめ、15名ほどのマネジメントに携わる。職種横断のマネジメントは、10月から初挑戦。

坂本 和大

Software Engineer

KLab、Sansanを経て、2020年3月より10Xにジョイン。Stailerのアプリ開発を行うエンジニアが所属するアプリケーション開発部のマネージャー。15名ほどのマネジメントに携わる。

山本 茉奈

Corporate Operations Manager

2022年4月より10Xにジョイン。2023年10月よりファイナンス&コーポレート本部コーポレートアドミニストレーション部のマネージャーに就任。3名のマネジメントに携わる。

——現場でマネジメントを行う皆さんが抱えている、課題感や悩みがあれば教えてください。

赤木:2022年10月のマトリクス組織への移行により、事業・組織として大きく潮目が変わったように思います。今日集まった中には、この組織変更でマネジメントロールを担うようになった人も多い。大きな環境の変化によって、事業・組織が好転した面もありますし、新たな課題も見つかったと感じています。

江波:プロダクト本部は、チーム自体が発足したばかりで、全員が手探り状態。マネジメントにおいても「我流でやっているけれど、これで合っているのかな」という不安は常にありますね。また、デザイナーやデータプロダクトなど、自分が経験のない職種のマネジメントは、結構チャレンジングだなと感じています。

坂本:そもそも少数精鋭で難易度の高いプロダクトに向き合っているので、常にリソースとの闘いで(笑)。事業・プロダクトの成長とピープルマネジメントの両方を担う立場なので、物事の優先順位づけにはいつも頭を抱えていますね。

——HRから「ミドルマネジメント支援」「ミドルマネジメントポリシー策定」の話が共有された時、率直にどのように感じましたか?

江波:慣れないマネジメントに葛藤や不安もある中で、会社としてフォローアップのスタンスを示してくれたことは、率直に心強いと感じました。またポリシーとして言語化されたことで、これから何かに迷ったり困ったりした際に、立ち返る場所があるのは安心できます。

僕はもともとプレーヤー気質が強く、目の前の課題に自分で対処しようとしてしまいがちだったんです。ただそんな時、ポリシーの冒頭にある「人を動かし、ことを成す」というフレーズを思い出すと、良い意味でブレーキがかかる。目に見える形で表現された効果を感じています。

山本:私も同じ感想ですね。これまで頭の中でぼんやりとしていた価値観が明確になったことで、まず自分がその基準を満たす仕事ができているのか、自らに問いかける基準ができたと思います。

赤木:実際に僕たちマネージャーから出た言葉を紡いでいるので、まさに「10Xらしいマネージャー像」が可視化されていると感じます。特に最後の「未来を探索する」は、10Xが大切にする「Think10x」が浸透しているメンバーだからこそ、自然に出てきた言葉だと思います。

あと、僕としては2023年9月に実施したマネジメント合宿がとても印象深くて。普段リモートで働いていることもあり、なかなか話す機会が少ないマネージャー同士で悩みや課題を共有したり、外部講師の講演会を聴いたり。そこに今回のポリシーが加わったことで、じわじわと、でも確実に、納得感が高まったと感じます。

坂本:日々目の前の仕事に追われる中で、マネージャー同士で話す時間は本当に貴重です。その時間で明確な解が出るわけではなくても、「みんな同じような壁にぶつかって悩んでいるんだな」とわかるだけでホッとできますから。

——マネジメントの皆さんが、今後自身として取り組みたいと考えていること、それを踏まえて人事に期待することがあれば教えてください。

山本:今日集まった4人を見ていただいてわかるように、一言で「マネージャー」と言っても、マネジメントする領域や規模はさまざま。当然ながら、ポジションやレイヤーによって求められることは変わってくると思っています。なので、“グラデーションのある支援”があるといいのかなと思います。

坂本:山本さんと同じ意見ですね。全マネージャー向けの支援とあわせて、特定の職種のマネージャーに向けた研修制度などがあると、より実践性が高まると感じます。

赤木:機能別のチームに分かれたことで、より一層チーム間の連携が求められるようになりました。今はチームやマネージャーによって「Stailerはこうあるべき」という価値観や考えが異なる面もありますが、今後は10Xの中で統一の見解を持ち、足並みを揃えていくべき時期に差し掛かっているんじゃないかとも感じています。

江波:赤木さんの話を受けてもう一段上のレイヤーでお話しすると、中期経営計画など、経営層から発せられるメッセージを私たちマネージャーが正しく咀嚼し、メンバーに伝播させていく必要があります。10Xが組織としてもう一歩前に進むためにも、マネジメント同士で経営方針についても話し合ったり、認識をすり合わせたりする場があればいいなと思いますね。

執筆・安心院 彩(@Ayaaa_ajm


10X Management Policyを公開しています!

この記事で紹介した10X Management Policyは、社内での活用だけでなく、社外の方にも人事・マネジメント施策のヒントや10Xのカルチャーを体感してもらえればと思い、内容を公開しています。10Xの仲間も、HRをはじめ複数のポジションで募集しているので、まずはカジュアル面談からなどお気軽にご応募ください。

10X Management Policy
https://10xall.notion.site/10X-Management-Policy-0b19e10edd7d412ca6bc2952abcd9d2b


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