ネットスーパーの要!? あなたの知らない「商品マスタ」の世界
10XではスーパーやドラッグストアのEC化を支援する「Stailer(ステイラー)」を提供しています。リアルの店舗を持つ小売事業者がECを開始するにあたり、「店舗」と「EC」を両立させるためにシステムやオペレーション上の数々の工夫が必要になりますが、その中でも”要”と言えるほど重要なのが「商品マスタ」です。
「商品マスタ」とは何なのか、なぜ大切なのか、10Xはどのように商品マスタに取り組んでいるのか?
今回は「商品マスタ」の謎に迫るべく、Growth&Successチームのデータプロダクトマネージャー 野口 友熙さん(@tnoguchi15)に話を聞きました。
株式会社ブレインパッドにてデータサイエンティストとして各種サービスの利用ユーザ分析、製品の需要予測/在庫最適化、インターネットメディア企業における企業間マルチビッグデータ連携の実証実験等に従事。2022年3月より10Xに入社。データプロダクトの構築やデータパイプラインの実装を担当
当たり前の買い物体験を実現する要
ーまず「商品マスタ」とは何か、教えてください!
ネットスーパーの根幹となる売り場を創るための「商品についての正しい情報が集約されたマスターとなるデータ」のことです。
みなさんがECを使う上で、「正しい商品情報が掲載されている」「注文したらそれが買える」というのは当たり前のことだと思います。ただ、ネットスーパーやドラッグストアでは、その当たり前を実現することが中々難しいんです。その理由は「店頭で販売されている商品を同時にECでも販売している」「店頭でも現時点の在庫が1つ1つが正確に管理されているわけではない」「商品の点数が非常に多い」などの特徴があるからです。
そんな中で、ECの「売り場」に正しい商品情報が、極力多くお客様に便利な状態で表示されるために必要なのが「商品マスタ」です。「商品マスタ」を参照することで、「ある店舗で、どの商品が、何個、いくらで売っているか」を管理しています。
ー 商品マスタは、一般のお客様はとってはどんな関わりがあるんでしょう?
具体的に、ネットスーパーでバナナを売買する場合を考えてみますね。
- 「そもそも注文したバナナがちゃんと在庫として物理的に存在していて、注文したらお家に届く!」
- 「ある店舗ではバナナが、普段200円のものを今日だけセールで100円!お一人様3個限定!」
- 「ある店舗ではフィリピンバナナは売ってない。しかし台湾バナナを10個だけ販売している!」
こういう「当たり前」の状態を実現するために、実は裏で「商品マスタ」が活躍しているんです。商品情報以外にも、店舗や商品のカテゴリ、配送エリアの制御も同じくマスタで行っています。まさにサプライチェーン全体を作っているイメージです。
ー なるほど。商品マスタをつくる上で、10Xはどのように関わっているんでしょうか?
ネットスーパーを立ち上げる上で、当たり前のものを、当たり前の価格で、当たり前のように買い物できることが重要なのは自明です。ただ、小売事業者の実情に鑑みるとネットスーパー立ち上げにおいて様々な課題を抱えているケースが多いんです。
データの準備の場合を例に挙げると以下のようなお悩みをお持ちです。
・「データをいろんなところで管理しているため、あちこちに散らばっていて整理が難しい」
・「1店舗何万というSKU(※Stock Keeping Unitの略で、受発注・在庫管理を行うときの最小の管理単位)があるので、管理が超大変」
・「生鮮食品は鮮度が大事・在庫も流動的なので、常に情報をリフレッシュしなくてはいけない」
・「不定貫(※肉など重さが一定でないもの)の商品では、グラムでは把握しているが点数では把握できていない」
・「定貫の商品であっても、正確な点数は事細かく管理していない(生鮮野菜など)」
これらの課題感に対して、10Xでは小売事業者が既にお持ちのデータを受領し、10X側で加工を加えることで半自動で「商品マスタ」を生成し、ネットスーパーの売場を構築しています。これはStailerの中でもとても重要な価値になっています。
さらに、ベンダー向けの発注・廃棄削減のための業務データ作成、温度帯の考慮、ピックパック用スタッフアプリにおけるカテゴリ並び順制御など、ECとしてのフロントエンドを作るだけでなく、オペレーション部分にも染み出しているケースもありますね。
Excelで手運用→自動生成で商品の品揃えも改善
ー「半自動で商品マスタを生成」という点について、詳しく教えてください。
一般的なネットスーパー構築のプラットフォームでは、ネットスーパーに流し込むためのデータを小売事業者が自分たちで用意しなければならないケースがほとんどです。さらに Excelファイルに店舗の担当者が毎日入力してインポート等の手動の作業が必要で、日々少なくない時間や労力がかかります。
Stailerではこの作業の大半を自動化しており、毎日のマスタ生成が簡単に行なえます。また、不具合があった場合に検知する仕組みも整っています。小売事業者が「早く、簡単にECを立ち上げられる」というコアバリューの一つです。
ーそれだけ手間が減ると、現場スタッフの方も助かりそうですね!
そうですね。とあるパートナーの方からは「商品マスタの運用人数が半減した」という声を頂いたこともあり、嬉しかったです!
さらに、マスタ運用の手間が減ることはお客様にもメリットがあります。なぜかというと、手動でデータを用意するのは大変なので結果的にネットスーパーに掲載できる商品数が減り、「店舗より品揃えが少ない」「店舗と価格が違う」というIssueを招きかねません。
商品マスタを自動化しネットスーパー用のデータを用意する手間を劇的に改善することは、店舗での豊かな商品バリエーションをネットスーパー上でも再現し、お客様が便利に買い物できる体験づくりにつながっているんです。もちろん、スタッフの方の工数の大幅な削減にも寄与します。
dbtを活用し複雑かつ大量なデータをマネジメント
ー「商品マスタ生成」はどのような技術で実現しているんでしょうか?
冒頭のネットスーパー立ち上げ時の課題の話ともつながりますが、ネットスーパーで使うデータは多岐に渡り、量/質ともに簡単なものではありません。10Xではこのデータを取り扱うのはソフトウェアエンジニアではなく、 Growth&Successチームで特化して対応しており、モダンな技術スタックを用いて、複雑かつ大量なデータへの対処をしています。
具体的には、dbtと呼ばれるツールを用いてデータパイプラインを構築し、商品マスタ生成を行っています。詳細は、 チームメンバーの瀧本さん(@takimo)がData Engineering Studyで登壇した時の資料をぜひご覧ください!
資料:dbtを使ったELTデータパイプライン構築と運用事例 - DataEngineeringStudy #13
また、売場を半自動で作るデータパイプラインのみならず、万が一異常データがStailerに連携された場合に売場を守るためのデータチェック/バリデーションの技術にも力をいれています。
ーGrowth&Successチームは具体的にどんな業務を担っているんでしょうか?
少しだけデータの流れと開発環境をお見せします。
全ての元になるのは、パートナーから受領するデータです。しかしながら、Stailerで商品などを表示するためには、最終的にはStailerでインポートできる仕様のデータに整形する必要があります。ここで使うのがdbtというツールで、パートナーから受領した元データを様々なロジックを通じて加工し、最終的にはStailer仕様のデータを出力します。
このdbtにおけるデータ変換の流れ(データパイプライン)の設計、変換ロジックの実装を、Growth&Successチームの業務として担っています。
データパイプラインの実装は今後のStailer利用パートナー小売企業が増えた未来でもスケーラブルに対応できるような体制をつくっています。
商品マスタの未来
ー商品マスタは今後どうなっていくのでしょうか?
今以上にパートナーやその先にいるお客様の買い物体験が「当たり前に便利に使える状態」を届けるという営みは引き続きレベルアップさせていきたいです。その中で、Growth & Successチームで将来的に実現したい構想も色々とあります。
例えば、こんなことをチームでは検討しています!
- 単に品揃えを拡充しSKUをたくさん売るだけでなくて、品揃えに濃淡を付けたり、取り扱いアイテムの意思決定のサポート
- ネットスーパー用の売場をただ作り続けるだけではなく、需要予測だったり発注の推奨コントロールをデータ出力して、廃棄や機会損失を減らすサポート
- ネットスーパー上での品揃えが多すぎて逆に探しづらいという方にむけて、売り場を人によって出し分けるパーソナライゼーション
現在の業務や見えているデータから発展する形で、やれそうなこと / やりたいことがたくさんあります。
また10XのGrowth & Successチームは、Stailerというプロダクトにおける在庫データマネジメントと、プロダクトを使ってくださるお客様の購買行動の把握を通じた販促のようなグロースという両方の機能を持っているのが特徴です。商品に関するデータとユーザの購買行動/属性情報データが同時に存在することが面白みですね。
ですので、双方をうまく紐付けることができれば、小売に向けたデータ整備からお客様向けの色々なグロース施策まで「商品マスタ」がその中核を担うようになる未来もくるかもしれません。パートナー企業とエンドユーザー、それぞれに向けて新しい価値を提供するハブを目指しています。
ーこれからどんな方と一緒に働きたいですか?
10XのGrowth&Successチームは、事業価値を最大化するためなら何でもやるチームです。
事業やプロダクトの位置するフェーズによってやるべきことは刻々と変わっていくことが想定されますし、様々な経験を持つメンバーが活躍していると感じます。
- データ領域にもっともっと飛び込みたいPdMの方
- DXコンサルのプロジェクトマネージャーの方
- エンジニアの方でプロダクトの開発をリードからビジネスドメインへも守備範囲を広げたい方
ぜひ、カジュアルにお話ししてみませんか?
10Xのデータマネージャの話を聞いてみたい方へ/あるいはキャリアについて - 株式会社10Xの中の人のカジュアル面談 - Meety
株式会社10Xの中の人とお話しませんか?Meetyは、"話せるネタ"をキッカケにつながれるカジュアル面談プラットフォームです。
https://meety.net/matches/SzgmzNoicpJt
ー最後に一言お願いします!
商品マスタ生成、およびサプライチェーン全体のDXはビジネス面でも技術でもパートナー/エンドユーザの双方にとって価値を出せる活動です。
今日の記事の中では触れられませんでしたが、パートナーや10Xの他の部門であるBizDevやDev、CS含めたチーム全員で最高のユーザ体験のために頑張っています。データや技術にこだわりを持ちつつもそこに過度に固執せず、チーム一丸で事業に向き合っているからこそ出せる10Xな価値が、商品マスタ生成という仕事の魅力です!
10Xのミッション・バリューに共感いただける方からのご応募をお待ちしています!