「今は命を吹き込むフェーズ」10Xの新人事評価制度、運用担当メンバーの本音

2023/3/24


ー「10Xの新人事制度、導入してみてどうだった?」

2022年10月、10Xは事業を成長させていくために組織体と人事制度を刷新しました。特に評価制度に関して、以前までの評価制度は10Xのバリューである「Think 10x」「Take Ownership」「As One Team」の3つの要素を軸とした5段階評価でした。しかし今回は、10Xとして「守るべき品質」を定義し、事業を成長させていくための組織体と人事評価制度へと大きく変更したのです。その内容がこちら。

【マトリクス組織】
「マトリクス組織」とは、レポートラインが2つ以上ある組織のこと。そのため、メンバーは複数のレポートラインや上長を持つことになる。10Xはパートナーの事業成長に伴走し、その成果を最大化するための「Stailer事業本部」、プラットフォームとして汎用的な資産を構築する「機能本部」、全社の基盤を提供・維持する「コーポレート本部」の3つで構成されている。


https://speakerdeck.com/10xinc/zhu-shi-hui-she-10x-culture-deck?slide=37


【新人事制度】
等級制度、評価制度、報酬制度の3つをリニューアル


組織と人事に向き合ったCEOの12ヶ月



そして、10月〜3月にかけて試験運用がスタート。新人事制度は、現場でどのように受け入れられているのでしょうか?導入と運営を担当するCorporate Operations(CorpOps)の山本茉奈と、HRPB部の真鍋卓也に話を聞きました。

山本茉奈

Corporate Operations

2022年4月に10X入社。Corporate Operationsチームにて、人事制度のアップデートや労務関連の業務に携わる。

真鍋 卓也

@manataku14

HRBP

国際協力機構にて主に水・環境分野における途上国支援業務に従事(スリランカ駐在)。その後、ラグビーワールドカップ2019組織委員会において人事戦略業務を担当。大会終了後、地方創生ベンチャー、EYにて主に官公庁向けのプロジェクト・大規模国際イベントの立ち上げを推進・実行。趣味は旅行とラグビー観戦。

愚直にオペレーションを回し、制度の品質を上げる

ー10Xは2022年10月から新人事制度へ移行し、現在は試験運用期間中です。山本さんと真鍋さんは、新人事制度の運用担当なんですよね?

山本:そうですね。新人事制度の検証と改善を目的に、試行錯誤しながら運用を回しているところです。

真鍋:僕らは「事務局」として、中間評価といった大きなタスクを推進する一方で、改善や負荷を軽減するための自動化もしています。事務局には僕と山本さんのほか、CorpOpsの川村優季さんがいます。山本さんがプロジェクト全体を管理しつつ「何を改善すべきか」を考え、中間評価・期末評価といった大きめのタスクのリードを僕が担当、そして川村さんは自動化や運用、加えて困ったときのオールラウンダーとして立ち回ってくれています。

ー事務局とは、メンバーに「評価はこうやってね」「締切は◯日だよ」と伝えるような役割なんでしょうか?

真鍋:社員の皆さんにはそう見えていると思います。ただ、作業依頼をする前に細かい運用がうまくいくかを検証したり、必要なガイドラインを整備したり、意外と細かいところまでシミュレーションなど裏側でもいろんな準備をしています!

ー見えないところでも、色々な準備を行っているんですね

山本:矢本さんのブログ(『組織と人事に向き合ったCEOの12ヶ月)にも書かれていますが、新人事制度の目的は「会社とメンバーが同じ方向を向いて走る状態をつくこと」「会社とメンバーのフィードバックがめぐり続けること」「成果を報酬として返し、適切に分配すること」の3つです。そのために、私たち事務局は制度の品質を上げながら、できるかぎり運用コストを削減できるよう、オペレーションを検討しているところです。


100人規模にはtoo muchとも思える制度をあえて導入した理由

ー新人事制度を導入することで、10Xがどうなることが理想なんでしょうか?

真鍋:10Xが持続的に大きくなっていくためのインフラにしていくことが理想です。10Xの事業は、中長期に渡って挑み続けるもの。組織もそれにあわせて大きくしていくために、多様な人たちを多く受け入れられる体制と、貢献してくれた社員の皆さんをきちんと適切に評価し、報酬を支払っていく仕組みを整えようとしているんです。

正直、評価には評価者、被評価者、経営、事務局含め、多くのコストがかかります。そのため、組織規模によっては、等級や報酬を細かく定義しなくても成立している会社もあるんです。今の10Xは100人規模の組織で、規模に対しては新人事制度はtoo muchと感じられるかもしれません。でも、中長期的に挑戦していく“仕込み”として、あえてライトにせずそのまま導入しようとしています。

ーtoo muchということは、新人事制度は今の10Xにとって「負荷が高い」のでしょうか?

真鍋:私たち事務局だけでなく、評価者やメンバーにとっても決して負担が軽いものではないと思っています。等級や評価、報酬それぞれの制度を完全に理解するためにある程度のドキュメント量を読み込まなければならないし、等級評価は8段階、評価のうち成果評価は8つの評価基準、行動評価は5つの評価基準があり、複雑です。そういう意味では、100人規模の組織ではよりコストのかからない運用にする、という選択肢もありえたと思います。

https://speakerdeck.com/10xinc/zhu-shi-hui-she-10x-culture-deck?slide=38

10Xでは今回、8段階の等級制度を定めた



ー負荷がかかるかたちでも、複雑な制度を導入することが、なぜ「仕込み」になるんでしょうか?

山本:評価基準って不可逆なものなんです。つまり、一度評価してしまうと、その内容をあとから簡単に変えられない。例えば、8段階評価で「これでいっか」と5の評価をつけた人を「今回は4です」としたいとき、その差分を説明するのはかなり難しいんですよね。今は浸透フェーズだからこそ、全社で認識をすり合わせて、評価者も被評価者も誠実に向き合える状態にしておきたいんです。

逆に、ここまで誠実にやらないと、せっかくの評価がメンバーのモチベーションダウンにつながるリスクもあります。だから、一定の負荷がかかってでも新制度の導入を愚直にやるという選択をしました。

真鍋:誠実さは欠かせませんよね。10Xの隠れたカルチャーは「誠実さ」だと思っているんです。10Xには誠実にプロダクトに向き合い、納得度の高いものを作りたいと思っている人が多い印象です。それは、コーポレート本部にいる僕らも同じです。新人事制度に関しても、メンバーの納得度を醸成するために、しっかり一つ一つのプロセスの意味を説明し、誠実に進めたいという想いがありましたね。

そして、新人事制度自体が質実剛健な内容なので、それと相まって運用もずっしりしているんです。だから、愚直にやる以外の選択肢がなかったとも言えるんですけれど(笑)。10Xのみんながこの「重い」プロセスを理解し、運用できると信じているから「重いけど頑張ってやるぞ!」と思えたところもありました。

山本:ですね!新人事制度の枠組みはCEOである矢本さん自身が中心となり組織課題を解決するために刷新されたものです。私たちはその枠組みに命を吹き込もうとしています。多少のコストをかけてでも、新人事制度が会社のカルチャーとして根付くように、愚直に向き合っているところです。


評価者とメンバーが誠実に向き合っている様子を「見える化」したい

ー今(取材時は2023年2月)はちょうど中間評価を実施していますが、感触はどうですか?

真鍋:個人的にいいなぁと思ったのは、 評価会議の場でマネジメント層や経営メンバーが「メンバーにどう成長してほしいと思っているのか」「事業に対してどんな目的を持ってほしいのか」を真剣に語っていたことです。評価制度の意義を理解したうえで話してくれていると思うと、すごく嬉しくなりました。

例えば、自分が評価するメンバーのことをすべて答えられるようにしたり、他チームのメンバーについても「この人のここがよかった」と話せるようにしたり、事前にめちゃくちゃ準備している評価者もいました。

一方で課題として見えてきたのは、マネジメント経験の有無によってフィードバックに差分が生まれてしまうことです。ここはもうちょっと、会社としてサポートしていきたいですね。

ー山本さんはどうですか?

山本:評価は各部門ごとに偏りが起きないよう、「キャリブレーション」という部門や社員を横並びでチェックする仕組みがあります。これによって、個人でつけていた評価を照らし合わせ「会社の基準」として足並みを揃えられてきたこともよかった点でした。会議で議論することで「この部門のこの人がこの評価なら、あっちの人はこの評価では?」「横から見るとこういう観点もある」と評価者同士で話せるようになり、解像度も上がりました。これぞまさに制度に命を吹き込むことであり、現場視点での運用が進み始めている手応えがありましたね。

課題は、可視化が難しいところです。特に「成果」を可視化するのはとにかく時間がかかりますし、何より難しくて…。

ーどういう点でしょうか?

山本:人事制度の中で示す「成果」は、社員のパフォーマンスや事業成果として中長期のスパンで間接的にあらわれるものだと思っています。でも、評価期間に評価者が評価のドキュメントを仕上げるまでの過程での苦労や負荷は毎期必ず発生するものです。さらに、評価の過程での悪い結果は即時にはっきりとあらわれます。具体的に言うと、評価を伝えるときの言葉選び一つをとってもメンバーのモチベーションダウンにつながってしまったりするんです。成果は見えにくく、失敗は見えやすいという特性があります。

だからこそ私たち事務局は、人事制度の仕組みを知ってもらうことはもちろん、制度を通じた成果をいかに可視化して全社に伝えていくか、が大事だと考えています。メンバーみんなで誠実に向き合っているからこそいい成果が出ているのだと、見えづらい部分をどんどん伝えていきたいですね。


メンバーそれぞれの頑張りが評価される=多様性につながる

ー新人事制度の運用も、肝がわかったらどんどんこなれてくるんじゃないかと思います。そうすると、お2人が話していた負荷も少しずつ軽減されたりするんでしょうか?

真鍋:そうですね!今はまだ始まったばかりなので、基準や手順などの細かな部分を毎回ドキュメントで確認してもらわなければなりませんが、今後1つ1つの基準をしっかり作り込めれば、評価者と被評価者の目線が合ってくる。そうすれば、徐々に運用コストも減らせると見通しています。

ーなるほど!新人事制度導入を経て「10Xならでは」と感じたところはありますか?

山本:すごくフェアだなと感じます。評価者は机上だけで終わらず、対象メンバーとしっかり向き合うために必要なファクトを自ら取りにいったり、言語化したりしているところも特徴的だと思っています。

真鍋:あと、ドキュメンテーションへの向き合い方も特徴的だと思います。今回、人事制度のリニューアルにあたり知見の深い金田さんという方にコンサルで入っていただいているのですが、金田さんも「このドキュメンテーション文化はすごい」と言ってくださっていました。10Xは普段からドキュメンテーションの文化がありますが、評価についても誰が見てもわかるように書こうとしている。事務局からも「そんなに長く書かなくていいですよ」と文字数制限しないといけないくらい(笑)。しっかりドキュメントを書くことによって、納得度を高めようとしているんです。

それから、事務局が3人体制でしっかりしていることも特徴です。会社によっては「評価回りの業務は人事の一人で回してください」というところもありますが、一人でやろうとすると相当大変で、ここまでしっかり説明を尽くすことはできないかもしれません。評価の運用にしっかり投資するというのは、貢献したメンバーに報いたいし、成長を促しつつ長く働ける環境に投資したいという10Xの会社としての姿勢のあらわれだと思っています。

ーお2人は新人事制度を通じて、10Xのメンバーにどうなってほしいと思っていますか?

真鍋:深淵なる問いですね...(笑)。大前提としてピープルマネジメントに正解はなく、人間は感情の生き物なので難しいものです。そのなかで、人事制度はメンバーが成果を出すためのコミュニケーションツールになります。だから僕は、評価を通じてコミュニケーションを行い、よりよい成果につなげてほしい。メンバーも、そんなマネジメント層の背中を見て「マネジメントをやってみたい」と思うようになってくれるとさらに嬉しいです。

山本:人事制度がうまく回るようになれば、いろいろなメンバーの頑張りを多角的な視点で見ることができます。そうすると、評価軸が曖昧だったときに比べて、さまざまなレイヤー・職種のメンバーがそれぞれの強みを活かして働く環境になっていくはず。これは、多様性にもつながることだと思っているんです。いろいろな職種・レイヤー・働き方の方をちゃんと評価できる仕組みにしたいですね。

ーこれから取り組みや改善をしたいところはありますか?
 
山本:直近ではオペレーションの効率化やシステム導入などです。評価において、人に向き合う時間はもちろん大事ではあるのですが、事業に向き合う時間とのトレードオフでもあります。今の品質を保ちながらも、より効率的に、負荷を軽減する方法は模索したいポイントですね。

また、直近の課題感ではありませんが、中長期的には制度が形骸化しないような取り組みや改善は終わりなく続けていく必要があると思っています。

ーこれから10Xに入社される方や、働くことに興味がある方に伝えたいことがあれば教えてください

真鍋:評価・等級・報酬から構成される新人事制度は、組織のインフラだと考えています。中長期で挑戦する事業により多くの方を迎え、やりがいを持って働いて頂き、そしてその貢献を報いる制度になっていますし、まだ導入初期ではあるものの、それを愚直で誠実に運用できる土壌が10Xにはあると思っています。

今後、より多様な方を迎え入れ、多様な活躍や貢献を評価できる仕組みになってきていますので、10Xの事業や組織に共感いただいた方は、ぜひ気軽にお話しましょう!

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