コーポレート職だからこそ知りたい、キャリアの幅を広げるヒント

2022/12/22

専門領域を極めるイメージが強いコーポレート職の悩みに「キャリアの幅を広げるチャンスが少ない」があります。先駆者たちは、そうした悩みをどのように解決してきたのでしょうか?

「急成長スタートアップの裏側を支えるコーポレート部門大集合」ということで開催されたオンラインイベント「黒子のコーポレート大激論 Days」。今回は「コーポレート人材のキャリアの広がり」をテーマにしたセッションのレポートをお届けします。登壇したのはコーポレート領域を中心に採用支援などを行うWARCの執行役員である加藤健太氏と10XのCorporate Operations部部長である津田麻美子、モデレーターは同じく10XのHR本部に所属する小酒井睦美。コーポレート職のキャリアを、エージェント・現場それぞれの目線から深堀りしました。

加藤 健太

@kentakato212

WARC 執行役員

2011年よりJAC Recruitmentにてスタートアップ業界特化のチーム立ち上げ責任者を務める。その後、HR系スタートアップの取締役COOを経て、2018年にWARCへ参画。執行役員/人材紹介事業の立上げ責任者としてプレイング〜組織作りに従事。一貫してスタートアップ業界における人材紹介ビジネスに携わる。CxO、コーポレート職、エンジニア職と幅広い職種にて支援実績を残す。

津田 麻美子

10X Corporate Operations部 部長

人材紹介会社にて営業職、ベンチャー企業にて幅広いHR業務を経験。その後、各種オペレーションの構築・運用の経験を経て、10Xへ。美味しいものを食べることに目がない。

小酒井 睦美

@m_kozakai

10X HR本部

株式会社ビザスクで広報部門の立ち上げを行った後、株式会社IDOMで広報に従事。その後、ビザスクにHRとして出戻り主にエンジニア/ 新卒採用&研修担当として上場後の組織拡大を経験。2022年7月より10Xに入社。

コーポレート職がキャリアの幅を広げるヒント


小酒井:コーポレートでは経理や法務など専門色が強い職種が多く、それぞれを極めていくイメージがあります。それはそれでとても素敵なのですが、一方でキャリアの幅を広げる機会を得にくいとも言えます。その点、津田さんはHR領域に留まらず、PRといった職種も経験していますよね。一体どうやってその機会を得てきたんですか?

津田:生存者バイアスがあると思いますが(笑)。当時は事業会社へ未経験のHRとして入社していました。しかし入社1ヶ月ほどすると、「広報担当者が退職するから、あとはよろしくね」と言われて引き継ぐことになったんです。当時は「HR職を極めたくて入社したのに、なぜ広報をしなくちゃいけないの?」と思っていました。結果的に、+αになる機会を得ることができました。今思えば「とりあえずやってみた」が今につながっている気がしています。

小酒井:「やりたくない」という気持ちの折り合いはどうやってつけたんですか?

津田:会社にとって広報業務はとても重要だと理解していました。でも、正直に言うと当時の私は「どうやって手を抜こうか」と考えていたところもありましたね(笑)。

ただ、半年ほどPR業務を担当してみてわかったのは「採用と広報は深く関連する業務であること」。今でこそ「採用広報」と呼ばれている分野ですが、結びつきに気づくことができました。HRをやりたい気持ちは強かったのですが、提供したい価値観はPRでも実現できるところがあったんですよね。

小酒井:まずはやってみたことで、その価値に気づけたんですね。津田さんのように機会が降ってきた結果キャリアが広がっていくケースもあれば、逆に機会に恵まれないケースもあると思います。加藤さんのエージェント目線では、機会に恵まれないなかでもキャリアの幅を広げるためにどんなアクションをとるといいと思いますか?

加藤:そもそも、キャリアはタイミングによって大きく左右されます。これまで着々と積み上げてきた努力の結晶が、運の要素で変わるということです。世の中の印象だけに引っ張られず、まずは日々の積み重ねをしっかりやっていくことが何より大事ですよね。そして、スタートアップでは、ビジネスサイドと開発サイドがしっかり連携しているところが多いです。そこへコーポレートが加わり、さらに事業をドライブさせる方法を考えてみる。そこに、キャリアの幅を広げる機会があると思います。

津田:同感です。今の私も何者でもないわけですが、若い頃の私はもっと何者でもありませんでした。そのため、事業から逆算して考えることも難しかった。そこで実践していたのが自分のドメインと、「一緒に働いているメンバーが何をしているのか」を知ること。「経費精算の帳票ってなんで出さなきゃいけないんですか?」とか、ほかのドメインを持つメンバーにたくさん質問していました。私の場合、これをきっかけに採用から労務方面へキャリアを広げられました。一緒に働くメンバーのドメインを調べたり聞いたりすることも、いい手段になるはずです。


キャリア形成に焦ったら、まずは情報収集を!


小酒井:次のテーマは「キャリアの機会獲得や成長のために自分自身の振る舞いをどうするか」です。先に津田さんから話していただきましょうか。

津田:先ほどもお話ししましたが、疑問に思ったことを質問する姿勢は大事です。そして、スタートアップは事業成長スピードが速いのでチャンスも多い環境と言えます。それでもチャンスに恵まれないと感じたら、こだわりすぎないようにする。むしろ、いざというときのために「いつだってできます!」と虎視眈々な状態にしておくんです。当然ながら運はコントロールできないものなので、悩みすぎないほうがいいですね。

私から加藤さんに聞きたいのですが、「いいチャンスに恵まれない」と悩む人は多い気がしています。そんなとき、どんなアドバイスやサポートをしているんですか?

加藤:「コーポレート業務の理解をなかなか得られない」「自分が何をしたいのかが見えない」などの相談を受けることはよくあります。そういった悩みに対しては、たとえば社内Slackなどを辿って様々な情報をしっかり取りにいった上で「何が課題なのか」「自分の理解は正しいのかどうか」を照らし合わせるようにアドバイスしています。そこからわかることも多いので。

津田:私自身が転職回数も多く、「社内に機会がない=社外へ機会を求める」と考えたこともありました。しかし、今思えばすごく焦っていた気もしているんですよね。焦っている側からすると、コーポレート職がトレンドになっているなかで「自分が置いてけぼりになっているんじゃないか」「自社じゃないところへ転職したほうがいいんじゃないか」など、隣の芝生が青く見えることもあるように思うのですが、どうでしょうか?

加藤:津田さんと同じように、焦っているからこそ社外へ機会を求めに行くしかないと思っている人もいますね。ただ、僕としては転職がすべてではなく、現職にも機会はあると考えているんです。何より、今回のようなイベントが開催されているように、現在のコーポレート職はトレンドであり、各社での採用熱も重要度も高い状態です。それゆえに、いろいろなコーポレートスタイルが登場しています。一緒に働くメンバーに話を聞いたりして、情報を取りにいくことの重要性は高まっています。

津田:世の中のトレンドから見て、今の自分はどんなポジション・市場価値になるのかはどうやったらわかるものなのでしょうか?

加藤:もちろん、いろいろな企業へ話を聞きにいくのはありだと思います。外の人と交流したことがきっかけで、改めて現職やご自身の仕事の価値を見直せることもあります。転職する・しない関係なく、オープンにキャリアを考えるのはいいことですしね。


コーポレート職の変化と「変わらないこと」

小酒井:「コーポレート職がトレンドになっている」という話がありましたが、具体的にどんなところに変化を感じていますか?

加藤:私はスタートアップ領域の人材エージェント業を10年ほどやってきました。そして、津田さんと同じく「コーポレート職種の担当をやってくれ」と急に言われて、引き受けていたこともありました。実は当時、エンジニアやビジネスサイドに比べて、コーポレート職種は地味で動きも少ないんじゃないかと少々ネガティブに考えていたんです。

ですが、それから数年経った今、コーポレート職種の求人は当時以上にたくさん出ていますし、年収も上がっています。ドラフト時代の野茂英雄さんでいう「8球団!?」みたいな状態です。そこは、大きく変化したポイントですね。

津田:むしろ、今も変わらず求められ続けていることはありますか?

加藤:「プライドを持ってコーポレート業務をやりきる」「誠実さを持って自身のミッションを追求する」ができる方は今も昔も活躍されているので、そういった要素は今も変わらず求められ続けています。

小酒井:10Xのコーポレート部門では、労務や経理などの専門性を活かしつつワンチームとして従業員満足度を上げ、事業へ還元していくスタンスがあります。「コーポレート職がトレンドで、業務をやりきる人が求められ続けている」とのお話でしたが、企業側では「専門性を活かしながら他チームと連携し、みんなで全社を良くしていこう」と考える企業も増えていたりするんですか?

加藤:徐々に増えていますね。事業に入り込み、コーポレートのロールモデルや役割を見つけようと考える企業も増え始めています。別のセッションでは、10Xさんではリーガル担当の方が商談に参加していたという話がありましたし、LayerX執行役員の石黒さんも入社後は現場へ行くことが大事と話していました。同様に、コーポレートと現場を近づけていこうとする企業も増えている印象です。

小酒井:専門性を磨くことを大事にしつつ、いろいろなことにチャレンジしながら新しいスタイルをつくろうとする企業も増えつつあるんですね。

津田:10XにはCorporate Operationsという部署と職種があります。職種としてのCorporate Operationsは、まさに異職種間を横につなぐことに特化した役割を担っています。専門知識を持ちながらも、経理や労務をつないで生産性を上げていく。そして全体最適化を図ろうとしているんです。

参考 : 『Corporate Operationsという役割、あるいはCorporate Operations Managerという職種について


成功体験を積む一方で意識したい「失敗の積み重ね方」


小酒井:最後のテーマは「マネジメントとしてメンバーをどうサポートしていくか?」です。津田さん、どうですか?

津田:めちゃくちゃ試行錯誤していますが(笑)。そのなかでマネージャーとして心がけているのは、メンバーに適切なプロジェクトやタスク、業務を割り振って任せることです。かつ、任せたものを通じて成功体験、あるいは良い意味での失敗体験をしてもらうようにしています。私自身がこれまで幅広い経験をしてきたことで、ついつい口を出してしまうことがあるので…。できるかぎり口を出さないように気をつけていますね。

小酒井:適切なプロジェクトやタスクは、どうやって見極めているんですか?

津田:前提として、私はメンバーを信じているし、みんな天才だと思っています。そのうえで、最初に「これくらいはできるだろう」というものをジャブ的に任せて、お互いの期待値を揃えつつ「だったら、これは少しチャレンジングだけどできるよね?」とハードルを上げていく。いきなり大きなタスクをぶつけないように、コミュニケーションを重視しています。そのほか、日々の業務でドキュメンテーションのスキルを見たりして、任せるタスクのあたりもつけていますね。

そしていつも「Youならできちゃうよ」というノリでお願いしているんです(笑)。いきなり頼むと「できると言われても…」となってしまう。でも「えっ?だってこの業務ができたじゃない!だからできるよ!!」みたいな感じで伝えると、「確かにできますね!」となってくれるんです。

10X Corpメンバーの様子


小酒井:スタートアップへの転職だと、コーポレート職でも大きな裁量を持てるから転職したいと思う人は一定数いる気がします。そう考えると、最初にお願いする仕事の期待値調整はけっこう大事ですよね。そのあたり、加藤さんはどう思いますか?

加藤:津田さんがお話されていたように、成功体験を小さく積んでもらったうえで「こういう形で任せている」という意図もしっかりと伝えたほうがいいと思います。そして私から 1つ、マネージャーの方々にお願いしたいことがあります。自らが率先垂範して、ガンガンと仕事をとりにいったり、開発やビジネスサイドへダイブしているような背中を見せたマネジメントもしてみてほしいのです。そうすると「ダイブするようなチャレンジを我々はするべきだ」という意思表示になり、メンバーにとってキャリアの幅を広げる機会もどんどん生まれます。結果的に、ハッピーなサポートになりますよね。ですのでそのためには明日から「あれ、急にどうした?」みたいに攻めの姿勢に切り替えていただいて(笑)。

津田:あとはちょっとずつ失敗体験も積んでもらえるといいかもしれません。私もそうでしたが、「知識としてわかるもの」と「失敗から収拾まで対応した経験」では、後者のほうが記憶に強く残ります。もちろん、大きすぎる失敗は会社にも本人にも良くないので、適切な失敗の大きさは見極めが必要ですが。時には、あえてマネージャーがサポートしない判断も必要だったりします。...と、口で言うのは簡単なんですけどね(笑)。

そして、全メンバーが「守り方」を知っておいたほうがいいです。守れる範囲がどのくらいなのかわかったほうがアクセルを踏みやすい。例えば「何キロ先にコーナーがあります」を知っていれば、直線が続く場面においては適切なアクセルが踏めます。こういった基礎的なリテラシー向上に関することも、今後はやっていきたいです。

加藤:「ルールは縛り」と思われがちですが、実は気持ちよく仕事をするためのマナーや前提条件になっているものも多いです。守りあってこその攻めですからね!

小酒井:お2人とも、ありがとうございました!



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