Stailer AI発注が目指す在庫マネジメントの次の姿

2026/5/26

10Xの新規事業として、水面下で着実に仕込みと検証を続けてきた「Stailer AI発注」。 すでに1店舗目の立ち上げを完了し、現場でのリアルな手応えと課題が見えてきました。

泥臭い現場検証を経て、10Xが今どこを目指し、小売の「在庫」という難題にどう立ち向かおうとしているのか。今回は代表の矢本から、新規事業のコアとなる思想をお届けします!

矢本 真丈

Founder, 代表取締役CEO

丸紅株式会社、NPOを経て株式会社スマービーの創業から売却を経験。株式会社メルカリ子会社にて新規事業のプロダクトマネージャーを経て、10Xを創業。

Stailer AI発注が目指す在庫マネジメントの次の姿

「在庫」は、小売の現場で最も重要でありながら、最も扱いが難しいテーマのひとつです。欠品は売上と信頼を失わせ、過剰在庫は粗利と現金を削り、廃棄や作業負荷を生む。
しかも「最適な在庫数」の答えは、ブランド・店舗・カテゴリ・曜日・天候・販促・地域性など、無数の条件で変わります。

Stailer AI発注が取り組んでいるのは、単に「発注数を計算するシステム」をつくることではありません。私たちが目指すのは、多様な状況に適応しながら適切な在庫を運用し続けるための 「在庫マネジメントの基盤」 です。
この記事では、その「次の姿」を、AI発注のプロダクトビジョンに沿って整理してみます。

在庫マネジメントは「正解が一つ」ではない

在庫を適切にコントロールしたい、という命題はどの店でも共通です。ただし、その「適切」の定義は店舗・棚・商品ごとに異なります。

  • 夕方に10個あれば十分な店もあれば、100個残したい店もある
  • 棚のフェイス数や関連商品の並びで売れ方が変わる
  • 特売のタイミングでは、安全在庫の考え方も変わる
  • 業態(SM/GMS/ディスカウンター)や地域性・季節性でも最適がズレる


ここで重要なのは、こうした多様性に対して 「個別カスタマイズで頑張る」ほどスケールしなくなる という点です。導入と運用が重くなり、改善は属人化していく。
だからこそ次の姿として必要なのは、個別最適の寄せ集めではなく、多様性に「構造的に適応できるシステム」 です。

「精度」を約束するプラットフォーム

Stailer AI発注が5年後に目指すコアの価値はシンプルです。

多様な状況・多様な在庫戦略に適応し、高い精度の発注勧告数を計算し続ける

ここでいう「高い精度」は、ふわっとした称賛ではなく、約束できる水準 であるべきだと考えています。「精度が高い」という言葉は、顧客や店舗、カテゴリーごとに期待が大きく異なるからです。

そこで私たちは、共通のビジネスゴール、たとえば

  • 毎回の発注で欠品回避率をどこまで高められるか
  • 在庫金額の推移をどのレンジに収められるか
  • 廃棄(ロス)をどれだけ抑制できるか
  • 発注作業時間をどれだけ削減できるか

といった、意味のある指標で精度を定義し、評価できるシステム を目指しています。

中核は「評価が回る」ことにある

発注数は、需要予測・安全在庫・リードタイム・特売影響・店舗特性といった複数の要素から計算されます。
多くの発注システムでは、ここがブラックボックスになるか、逆に細かな要素を人が管理し続ける運用になりがちです。結果として、システムと人の責任分界が曖昧になり、成果がきちんと測れず、改善のループが生まれにくくなります。

AI発注を導入いただいた1店舗目の立ち上げで私たちが強く感じたのは、AI発注の成否を分けるのは「モデルが賢いか」以上に、評価とフィードバックが回り続ける状態を作れるか だということでした。

評価の軸が揃うと、現場と開発の景色は次のように変わります。

  • 「この精度でOKか」「どこが悪いか」の会話が、主観から客観に移る
  • 需要予測・安全在庫・特売影響を分解して追えるため、打ち手が具体化する
  • 現場の違和感が「印象」ではなく「条件と事実」として回収され、改善に取り込める
  • 「この挙動なら任せられる」という納得感が生まれ、自動化の適用範囲を広げられる

つまり評価は、改善の起点であり、自動化を進めるための信頼の通貨でもあります。Stailer AI発注の中核は、賢いモデル単体ではなく、この評価サイクルそのものに置いています。

ユーザーが自分で成果を出せる状態へ

AI発注というプロダクトは、導入後に伴走がないと成果が出ない形を目指していません。むしろ逆で、システムやユーザー自身が評価を学習し、運用・改善サイクルが回る状態 を目指しています。

ただし、そこでの難しさは「データ量」です。店舗数 × 商品数 × 日次の世界で、BIにチャートを並べても全店舗を眺めるのは現実的ではありません。発注の自動化が進むほど、ユーザーの役割は「分析(モニタリング)」に移ります。だからこそ分析は、高度なスキルを必要とせず、極限まで簡単 であるべきです。
たとえば、

  • 数行の文章を読むだけで、問題の有無と場所がわかる
  • 次に取るべきアクションが提案される
  • フィードバックが意識せずとも改善に取り込まれていく


最終的に発注の責任を担うのは現場のスタッフです。その人にとって「数字が見える」「改善できる」「継続できる」状態を作れて初めて、AI発注は機能します。

導入は速く、立ち上げは確実に

新規事業としての方針でも、私たちは「立ち上げきる(狙った状態に到達する)」ことを最優先に置いています。

小売の顧客はROIに厳しく、中途半端なプロダクトは深く使われず、リプレイスに晒され、信頼と次の導入機会を同時に失います。だからこそ、Stailer AI発注は「巨大な構想で一気に在庫システムや基幹システムを置き換える」のではなく、

  • 導入・立ち上げを圧倒的に早くし、
  • 価値実感までのリードタイムが短く
  • 評価と改善が回り
  • その結果として、適切な発注が積み上がり信頼が生み出される

という順番にこだわります。立ち上がったプロダクトだけが、次の地平を作れるからです。

当然ながらまだ道の途中であり、困難も多いですが、この王道を進むことが最短ルートだと考えています。

在庫マネジメントの次の姿は「自律性」

まとめると、私たちが目指す在庫マネジメントの次の姿は次のようなものです

  • 多様な状況・戦略・コンテキストに構造的に適応できる (だから、スケールできる)
  • 精度を「約束できる形」で定義できる
  • 結果と要素を評価し、そのフィードバックが意識せずとも取り込まれる
  • 伴走や重い運用なしに、ユーザー自身が成果を出せる
  • 改善が安全にリリースされ続ける


そして、これらを成立させる最短ルートは、「導入が速い」こと「評価が回る」こと です。
Stailer AI発注は、発注や在庫のマネジメント業務を 「職人が当てるもの」から「改善可能なシステム」へ 変えていきます。


以上、代表の矢本によるStailer AI発注のビジョンをお届けしました。

10Xが挑戦する「Stailer AI発注」は、まだ始まったばかりの、まさに“道の途中”です。 これからもスピード感を持ってプロダクトを磨き、現場に価値を届け続けていきます。今後の動向もお楽しみに!

また、私たちは今、この新規事業を最速でスケールさせていくコアメンバーを募集しています。
記事で触れた「職人の技をシステムに落とし込む」挑戦は、10Xが向き合っている課題のごく一部です。簡単な仕事は一つもありませんが、だからこそ挑戦しがいのある打席がたくさんあります。

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