ここからが、BizDevの真価を問われる本番。Stailerの振り返りとこれから【Stailer3周年企画】
10Xが開発を行う「Stailer(ステイラー)」はスーパーマーケット、ドラッグストアなどの小売チェーンがECを立ち上げるためのプラットフォームです。お客様向けのアプリや、ピッキング・配送を管理するオペレーティングシステムなど、EC運営にあたって必要なプロダクトを一気通貫で提供しています。
2023年6月に、Stailerはリリースから3周年を迎えました。これまで事業はどのように成長していったのか、どんな困難に直面したのか、そして今後の挑戦とは。Stailer3周年の節目に、プロダクト・ビジネス、2つの側面から、Stailerの成長を振り返ります。
今回はビジネス編。Stailerの立ち上げ初期からBizDevとして事業に向き合う赤木さん(@tsutomuakagi)と田村さん(@TamuraHaruaki)に「BizDevの立場から見た事業のターニングポイント」を3つずつ挙げてもらい、これまでの歩みを聞きました。
※前編のプロダクト編もぜひ併せてご覧ください!↓
Stailer3周年企画 プロダクト目線で振り返る3年間。プラットフォーム化までの歩みと今後の挑戦 | 株式会社10X
Stailer3周年の節目に、プロダクト・ビジネス、2つの側面から、Stailerの成長を振り返ります。Stailerのリリースは、遡ること2020年5月。初めはネットスーパーのモバイルアプリに特化したサービスとして提供を開始しました。そこから3年が経ち、現在Stailerは10社以上のパートナー企業と事業を進めています。
https://10x.co.jp/blog/10xblog/stailer-3years-product/
2020年4月入社。三菱商事株式会社にて、海外向け自動車輸出や事業投資先への出向などを経験。 帰国後はモビリティ分野における新規事業開発、海外M&Aを担当。10X入社後は新規事業開発、新規パートナー開拓、プロジェクト統括を務める。
2021年2月入社。マッキンゼーアンドカンパニーにて、マネージャーとして主に製造業・農業等のtoB領域におけるオペレーション改善・組織変革・戦略策定支援等に従事。10Xでは、パートナーに対してプロダクトのリリースからグロースまでの企画立案・実行を担当
既存ネットスーパーを拡張する存在から、事業創出を共にするパートナーを目指して
——Stailerの歩みを振り返り、お二人の「BizDevの立場から見た事業のターニングポイント」を3つ挙げるとすると、いつでしょうか?
赤木:下記の3点でしょうか。
- 2020年の春頃、Stailerのリリース後に多くの問い合わせをいただき「思った以上に小売事業者の皆さんは困っているんだ」と気づきを得られたこと。
- 2020年5月に、StailerがWhole Productとしてネットスーパーの運営に必要な裏側のシステムをすべて作る、と社内で意思決定したこと。
- 直近、Growthに本気で向き合うフェーズになったこと。機能開発を通じて事業を伸ばすフェーズから、「ネットスーパー事業を本質的にいかに伸ばせるか」ということに取り組んでいます。
田村:自分は下記の3点です。
- 2022年、ライフ様に提供しているサービスのフルリプレイスを行ない、ネットスーパーに必要な機能を全てStailerが提供するようになったこと。
- 2022年の2月から6月にかけて、Stailerのプラットフォーム化を進めたこと。
- 赤木さんと同じく、直近、Growthに本気で向き合うフェーズになったこと。
小売ECプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」、100店舗に到達した「ライフネットスーパー」全店に提供 | 株式会社10X
株式会社10X(本社:東京都中央区、代表取締役CEO 矢本 真丈、以下10X)は、同社が提供する小売ECプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」が、首都圏と近畿圏で297店舗のスーパーマーケットを展開する株式会社ライフコーポレーション(以下ライフ)が運営する「ライフネットスーパー」全店舗に導入されたことをお知らせします。また、「ライフネットスーパー」は2023年3月15日に東有馬店でサービスを開始し、100店舗に到達しました。
https://10x.co.jp/news/stailer-life-100/
ライフ様のフルリプイスは2022年から取り組んでおり、2023年にはネットスーパー全店舗にStailerが導入されました
——2020年5月にリリースしたStailerの立ち上げ時期からBizDevにいる赤木さんは、この時期に2つのターニングポイントを挙げています。
赤木:2020年は、StailerがWhole Productとしてネットスーパーの運営に必要な裏側のシステムをすべて作る、と決めたのが最初の大きなターニングポイントだったと思うんですね。
それまでは、お客様が持つ既存のネットスーパーをアプリで操作できるように、サイトコントローラーを導入する形で支援していました。事業としては、少数精鋭で高利益をあげやすいビジネスモデルが担保できていたと思います。ですが、それでは事業の天井が見えている。すでにネットスーパー事業に乗り出しているお客様に対して、アプリの機能を提供するだけというのは、極めて限定的な支援の仕方だからです。
それよりは、「皆さんのネットスーパー事業そのものを立ち上げ・変革していきます。ゼロからプロダクトを一緒に作っていきましょう」と、最初からお客様の事業に深く入り込むような提案をしていかなければならないよね、と。
小売事業に入り込んで提案をを行うべくさまざまな「現場」に赴いていた
——Stailerとして初めてのリリースはイトーヨーカドー様向けのネットスーパーアプリでしたが、手ごたえは感じていましたか?
赤木:正直に言うと、当時は最初にイトーヨーカドー様に向けて作ったアプリが、他の小売パートナーにも需要があるのかは未知数でした。それが、リリースした後は続々とお客様からお問い合わせをいただいて。
「思った以上に小売事業者の皆さんは困っているんだ」と気づきを得られたのが2020年の春くらいだったかなと記憶しています。私にとって、これが2つ目のターニングポイントでしたね。
2020年〜2021年にパートナーとなったお客様方は、Stailerのサービスそのものにメリットを感じたというより、私たちの「業界を変革したい」という思いに共感してくださった側面が強いと思うんです。いわば、10Xという会社の可能性に賭けていただいたというか。本当にありがたいことだなと思っています。
——赤木さんから、Stailerの立ち上げ初期に印象的だった2つのエピソードをターニングポイントとして挙げてもらいました。田村さんが1つ目のターニングポイントに挙げてくれたのは、その少し後のタイミングですね。
田村:はい。思い出深いのが、ライフ様のネットスーパーシステムのリプレイスに携わったことです。ちょうど私は入社直後で、まだ赤木さんしかBizDevにいなかった時期ですね。
当時は、赤木さんも言うとおり、まだサイトコントローラーの事業を主として展開していました。ライフ様のように、ゼロからネットスーパーの立ち上げに深く入り込むプロジェクトはほぼ初めての中で、BizDevとしてもどのように立ち上げていくのかかなり手探りで進めていったように思います。
たとえば、どのようにネットスーパーのオペレーションが回っていて、ピックパック(商品のピックアップ〜パッキング作業)・配達などそれぞれの工程において、どのようなことを品質として担保しなければならないのか。一つひとつの問いに対して、0から解像度を上げていったフェーズです。
プロダクトもまだまだ完成度が低い状態で、お客様には「3ヶ月後がリリースです」と伝えつつ、裏側では「本当にこれで大丈夫だろうか」と焦りながらもなんとか形にしていく。そんな時期でした。
当時の田村さんと赤木さん。パートナー企業とコミュニケーションを重ねていた
1社に対しての「正解」を、いかに拡張できるかが問われた第2フェーズ
——続いて、田村さんが2つ目のターニングポイントとして挙げてくれたのは、2022年初頭のエピソードですね。
田村:2022年の2月から6月にかけて、1ヶ月に1社ぐらいのペースで次々にローンチをした時期があって。アルビス様(22年2月)・中部電力ミライズコネクト様(22年3月)・クリエイト様(2022年4月)・スギ薬局様(22年6月)のリリースが重なり、これらのパートナー企業には、Stailerを汎用的な形でプロダクトをローンチするということを経験しました。これが、私にとって2つ目のターニングポイントだったと思います。
田村さんの2つ目のターニングポイントでもある、アルビス様への出張時の一枚
当初の個社を念頭に置いた開発から、他社に展開できる状態に改めてプラットフォーム事業として成長していった「パートナー拡張期」とも呼べるかもしれません。
私が当時ミッションとして担っていたのは、10Xとして、いかに拡張性高く複数のパートナーに対して事業を提供できる状態を実現するかということでした。向き合う課題がかなり変わったなという印象を持っています。
——どういうことでしょうか?
田村:というのも、当初ライフ様でのオペレーションを想定して作ったプロダクトは、ネットスーパー事業全体に対しての正解にかなり近いと考えていました。それでも、バックヤードの作りなど、独自のオペレーションが前提になって組まれているプロダクトの仕様が多かったのも事実です。
はたして、今提供しているプロダクトは、日本にある数百社以上の小売事業者に対しての絶対的な正解なのだろうか。その問いに対して、自信を持って「イエス」と言い切れなかったんです。
実際に、パートナーにアプリの仕様を提案した際、「私たちの場合オペレーションはこういうふうになっているから、変えてほしい」「店舗独自のピック・パックの方法に沿ったプロダクトを作ってほしい」など、さまざまなご要望をいただきました。
それに対して、論理的に、かつ自信を持って「現状のプロダクトで大丈夫です」と言える材料を持ち合わせていませんでした。私たちが提供するプロダクトはどうあるべきか。複数のパートナーに対して導入することを前提に、一つひとつの機能をいかに汎用性高く抽象化できるかが、この時期に大きなイシューとして立ちはだかったんです。当時はかなり苦労しましたね。
——その中で、パートナーとどのようにプロジェクトリリースを進めていったのでしょうか?
田村:パートナーと密にコミュニケーションを取りながら、機能の取捨選択をしていきました。当時のStailerの標準仕様として作ったプロダクトをまずは正として、一旦導入したのち、そこで出てくるフィードバックに真摯に向き合って、検証を重ねながらロードマップにしていく。その際は「これがないとリリースできない」というマストの要求を厳選して集めてリリースしていくという流れで進めていったんです。パートナーからは、「この機能がなくて本当に大丈夫なの?」と、やはり不安の声をいただくこともありました。だからこそ、誠実に対話することを大切にしていました。シビアな話し合いの際には代表の矢本さんにも出てもらうこともありました。
1社1社のお客様に「なぜこの機能は今なくても問題ないのか」を丁寧かつ論理的に説明したんです。誠意をもって向き合ったことで、パートナーからの理解を得られたのかなと、当時を振り返って思います。
——BizDevの組織はどのように変化していったのでしょうか。
田村:当時は、初期からのBizDevメンバーだった私や赤木さん、そして吉開さんが、プロダクトリリースまでの「型」を一切持たないまま、野に放たれてそれぞれの地で開拓を血眼にがんばるような状態で。要するに、それぞれのプロジェクトや提案を短期決戦で一点集中していたんです。ですが、小売業界全体のニーズに応えるためには、さらなる事業拡大が避けられません。2021年から2022年にかけては、組織をいかに拡張して、拡張した組織でスループットを上げるかというところにも注力していた時期だったかなと思ってます。
社内の色々なポジションのメンバーとも協力し、組織としてのスループット向上に努めてきた
いよいよ小売業界の10xを仕掛ける時期、チームにも変化が
——2022年から現在に至るまで、パートナーとなっていただくお客様が増え、Stailerの成長を感じていたと思います。2人とも、今のフェーズを3つ目のターニングポイントとして挙げています。
田村:明確に「この時期だ」と言えないんですが。直近ではアプリの機能開発を通して事業を伸ばすところから、本気でネットスーパー事業のグロースに向き合うようになったのが、3つ目のターニングポイントだと思います。ネットスーパーをご利用いただくエンドユーザーを獲得するための「toCグロース期」とも呼べるフェーズです。それまでは、開発した機能や、提供したプロダクトの店舗展開、新しいパートナーの開拓によって、事業が成長していました。今は、プロダクトとは少し切り離し「どうしたら本質的にネットスーパーという事業を伸ばせるのか」という問いに直面しています。
赤木:同感です。リリースして初期の頃は、お客様とのファーストコンタクト時点で、お互いある程度期待値が高い状態からスタートしていたように思います。この時期のお客様は、プロダクトのアーリーアダプターになってくださったんですよね。
現在は、日本中のスーパーやドラッグストアなど、多くのお客様にStailerを知っていただきパートナーを拡大していく中で、10Xとしてもさらに進化が求められている時期だと認識しています。「Stailerは、そして10Xは何ができるのか」をストレートに問われているというか。Stailerを導入するとどのようなメリットがあるのか、説明責任を果たさなければならないと感じています。
田村:BizDevも、それぞれのメンバーが個人技で事業を拡大させていったところから、組織としてのスループットを高めるためにどうするかを、チーム全員で考えるようになったと思います。
現在は「どうしたら本質的にネットスーパーという事業を伸ばせるのか」という問いに直面している
Stailerは、まだまだ成長過程。BizDevがこれから挑む問い
——Stailerのこれまでを振り返ってみて、いかがでしたか?
田村:1社に向けたプロダクトをゼロから作って、機能や仕様を抽象化した上で、他社に展開していき、店舗展開もできるようになりました。この挑戦の積み重ねによって、きちんとプロダクトを提供するという打席に立ち続ける状態まで事業を推進してこれたと思います。これまでの道のりは着実に歩めてこれたと感じています。赤木さんはどう思いますか?
赤木:たしかに、Stailerをリリースしてから3年という期間でお客様に満足いただけるプロダクトを作れたことは成果として挙げて良いと思います。何もないところから、新しく届けたい価値を描いて、Stailerの導入によってお客様のネットスーパー事業をPMFさせ、さらにグロースさせていく。私たちのやりたいことを実現するステップを踏めているのは、手前味噌かもしれませんがシンプルにすごいことだなと思います。
田村:うまくいったのは、1社1社のお客様と信頼関係を深めてこれたからこそ。トップの方々とも接点を持ち、ネットスーパーの事業拡大に向けて本音で話し合えるようなパートナーシップを築けていると思います。これは、他のスタートアップと比べても、かなり強い資産と言えるでしょう。
赤木:私が13人目の入社だったのですが、いまは会社全体で100名を超え、10Xは組織としても10倍になっています。現時点までは、お客様やステークホルダーの方たちに成長する姿を見せられたのではないでしょうか。今後、事業をさらに伸ばしていけるかどうかは、この1~2年が勝負だと思っています。
田村:「パートナーがネットスーパーを成功させるために何が必要なのか」という問いに対する知見は溜まってきました。これからは、エンドユーザーの方々にネットスーパーを定期的にご利用いただくためにどのような働きかけができるのかについての解を探索していく時期だと捉えています。心強いメンバーも続々と増えて、良い感じに走り出せていると感じます。
会社の名前にもある通り、小売の業界全体に“10X”の成長を届け、変革していくことが私たちにとって究極のゴールです。Stailerはそれを実現できるポテンシャルを持っていると確信していますし、今はすごくポジティブな意味で“通過点”だなと思っています。
赤木:パートナーの方々のネットスーパー事業に伴走するなかでたしかな手ごたえを感じているものの、私たちは、この小売業界においてはまだまだ新参者。乗り越えるべきハードルも多いです。ですが、私はやっぱりStailerというプロダクトが「最強である」と信じてやみません。この気持ちを胸に、より高い価値を届けられるようにBizDevとしてがんばっていきます!
3年目を迎えたStailer。これからも10Xのメンバーは、Stailerを通じた身近な人の生活に深く関わる領域での挑戦と模索を続けていきます。
Stailer3周年企画、プロダクト編もぜひご覧ください。
ライティング:村尾唯(@yui3x9)
Stailer3周年企画 プロダクト目線で振り返る3年間。プラットフォーム化までの歩みと今後の挑戦 | 株式会社10X
Stailer3周年の節目に、プロダクト・ビジネス、2つの側面から、Stailerの成長を振り返ります。Stailerのリリースは、遡ること2020年5月。初めはネットスーパーのモバイルアプリに特化したサービスとして提供を開始しました。そこから3年が経ち、現在Stailerは10社以上のパートナー企業と事業を進めています。
https://10x.co.jp/blog/10xblog/stailer-3years-product/